日本総合研究所は11日、同社調査部が取りまとめたレポート「2015年末賞与の見通し」(「リサーチ・アイ」 No.2015-022)を公表した。同レポートによると、2015年末賞与の見通しについて、支給水準の低い対象者増加で一人当たり支給額が2年ぶりのマイナスになるとしている。

同レポートでは、今冬の賞与の展望について、民間企業の一人当たり支給額は前年比▲1.3%と年末賞与としては2年ぶりのマイナスとなる見込み(図表1)としている。今夏の賞与同様、雇用・所得環境は改善を続けるものの、支給水準の低い支給対象者の増加が平均値押し下げに作用する。

(※)厚生労働省「毎月勤労統計」事業所規模5人以上ベース。

(図表1)

具体的な押し下げ要因としては、第1に、5~29人事業所の支給対象者の増加があげられるという。今夏賞与では5~29人事業所の支給対象者が前年比+4.5%増加した一方、30人以上事業所は同+0.9%(※)。5~29人事業所の一人当たり支給額(25.5万円)は前年比+0.8%増加したものの、平均支給額(35.7万円)と比べ約3割低いため(図表2)全体を押し下げる。

(図表2)

なお、今夏の平均一人当たり支給額は、前年比▲2.8%減少したが、このうち5~29人事業所の支給対象者増加が▲1.3%ポイントの押し下げに作用する。この動きが年末賞与でも続く見込みという。

(※)支給対象者数は、6月の勤労者数と支給対象者割合から試算

第2に、支給企業における支給水準が低い、または無い常用雇用者の増加が挙げられる。昨年来の雇用者増加は、女性、高齢者が中心という。パートタイマー、高齢雇用延長制度対象者等が多く、支給のベースとなる月例給が低いほか、一部、支給のない雇用者もおり、総じて賞与支給は低水準としている。

さらにサンプル要因も残存する見込み。今夏賞与で、30人以上事業所は、▲3.2%の減少となったものの、本年実施の30人以上事業所のサンプル替えが、押し下げに作用した可能性大。

一方、賞与支給総額は、同+0.2%と緩やかに増加する見込みとしている。企業業績が、原油安に伴うコスト低下により堅調を維持するほか、人手不足の深刻化が、賃金上昇圧力となり、下支えに作用する。

国家公務員は、同+5.4%の増加となる見込み。人事院勧告に基づく賞与の0.1月分増加と月例給引き上げ0.36%が反映されるためという。ただし、11月中に臨時国会が開催されず、勧告実施のための法案成立の遅れから支給が年明け後にずれこめば、昨年末に夏季賞与の引き上げ分がまとめて支給された反動減により▲1.6%と減少する恐れもあるとしている。