起床してふと鏡を見たら目が真っ赤に染まっていて驚いた経験はないだろうか。そのような症状に陥ったときは、充血ではなく「結膜下出血」の疑いがある。 本稿ではあまきクリニック院長の味木幸医師の解説をもとに、結膜下出血の原因や症状について紹介しよう。
痛みはないが目が真っ赤になる!
白目の表面を覆っている粘膜である「結膜」の下に数多く存在している血管が破れるのが結膜下出血だ。結膜下出血になると白目部分が真っ赤になるが、その範囲には個人差がある。白目部分に赤い斑点ができる人もあれば、白目全体が真っ赤になるケースもある。
「目がゴロゴロするなどの違和感を覚えることはあるかもしれませんが、痛みは基本的にありません。よく痛みを訴えてくる患者さんもいらっしゃいますが、真っ赤になったご自分の目を見てショックを受けてしまい、感覚的に『痛い』と感じるのではないでしょうか」。
洗面台の鏡でふと自分の顔を見たり、朝起きて家族に言われたりして気がつくケースもあるように症状は突然現れる。ただ、1週間から10日前後で出血が体内に自然と吸収されるため、特別に治療をする必要はない。
せきやくしゃみでも結膜下出血になる
結膜下出血の原因には「疾患由来ではないもの」と「疾病由来のもの」がある。前者では嘔吐(おうと)やせき、くしゃみなどが結膜下出血を誘発する。後者の具体例としては高血圧やインフルエンザ、はしか、糖尿病、結膜炎などがあるが、これらの疾病が原因となることはまれだという。
「例えばノロウイルスで吐きまくって目に圧力がかかったときや、くしゃみを連発したときに出血して結膜下出血になることもあります。疾病由来が原因の可能性はゼロではありませんが、せきやくしゃみなどが原因としては意外に多いですね」。
充血との区別が難しい場合も
「目が赤い状態」といえば充血もそうだが、充血は白目部分に血管が浮き上がっているのがわかる一方、結膜下出血は白目部分がべったり赤くなり血管が見えない。この点が2つの見分け方の目安となるが、区別が難しい場合もあるため、素人による「セルフ診断」を過信するのは危険だ。
「目薬などに入っている『血管収縮剤』は充血を抑えるのに効果的ですが、結膜下出血には効きません。血管収縮剤の多用はリスクもあるため、むしろ使わない方がいいです。この2つが混合している症例もありますし、結膜下出血のように全体が真っ赤になっていても、よく診察してみると充血だったということもあります」。
結膜下出血は自然治癒するとはいえ、場合によっては高血圧や糖尿病などの全身疾患が疑われる可能性もある。充血との区別もしづらいケースもあるため、念のために受診を心がけるようにしよう。
※写真はあまきクリニック提供
記事監修: 味木幸(あまき さち)
あまきクリニック院長、慶緑会理事長。広島ノートルダム清心高校在学中に米国へ1年の留学。米国高校卒業後に母校に戻り、母校も卒業。現役で慶應義塾大学医学部入学。同大学卒業後、同大学眼科学教室医局入局。2年間の同大学病院研修の後、国家公務員共済組合連合会 立川病院、亀田総合病院、川崎市立川崎病院・眼科勤務。博士(医学)・眼科専門医取得。医師として痩身や美肌作り、メイクアップまでを医療としてアプローチする。著書も多数あり。