東京ビッグサイトにて11月8日まで開催された「第44回東京モーターショー2015」。今回、注目を集めたモデルのひとつが、マツダのロータリースポーツコンセプト「RX-VISION」だ。世界初公開の見逃せない1台である。
めざしたのは「世界一キレイなFR車のプロポーション」
1967年、ロータリーエンジンを搭載した世界初の量産車「コスモスポーツ」を発表して以来、マツダが形作ってきたロータリー車の歴史。それが途絶えてしまったのは、「RX-8」の生産が終了した2012年のことだった。その後も新型ロータリー車に対する期待や噂は絶えることがなく、ついに形になって現れたのが、この「RX-VISION」だった。
「RX-VISION」はFRの2シーターで、次世代ロータリーエンジン「SKYACTIV-R」を搭載予定。そのデザインについて、10月29日に開催された「プレビューデー スペシャルトークショー」で、マツダ執行役員 デザイン本部長の前田育男氏は、「世界一きれいなFRのプロポーションを作るんだという思いで、まずこの骨格を作りました」と解説した。実車を見学したが、その全高の低さ(1,160㎜)とロングノーズとが生み出すバランスは、ちょっと見慣れない感じがして、一歩先を行っている印象だった。
ボンネットの低さも際立っている。これは、ロータリーエンジンだからこそ実現可能なデザインだろう。ロータリーエンジンはレシプロエンジンと比べてシンプルな構造で部品点数も少ないため、同等の出力を発生するレシプロエンジンと比べてコンパクトにできる。収納スペースも少なくて済むというわけだ。
……少なくて済むのに、ロングノーズとはこれいかに!? 正直、よくわからないが、前述の前田氏の言葉通り、デザイン上の理由と考えていいだろう。
ちなみに、筆者の周囲のロータリーユーザーは、「6ローターエンジンを搭載するからじゃないのか?(笑)」と、冗談半分に推測を楽しんでいる。実際には、「RX-7」などと同じく、2つのローターを直列に配した2ローターエンジンの採用が予想されるが、6つのローターをつなげた大排気量エンジンを搭載するために、ノーズを長~くしているのでは? と言うのだ。自作の6ローターエンジンを搭載したチューニングカーは実在するし、4ローターエンジンであればマツダ自身もレース車両に使用している。
スカイアクティブロータリーエンジン開発への挑戦
「RX-VISION」では、キャッチコピーに「いつかは実現したい夢」とあるように、はたして市販化されるかどうかわからないモデルだ。実現のためには、次世代ロータリーエンジン「SKYACTIV-R」の開発成功が前提となる。"SKYACTIV"とは、マツダが新世代商品群に導入しているスカイアクティブテクノロジーで、パフォーマンスと環境性能を同時に向上させる技術を指す。
ロータリーエンジンは、燃焼室の形状からガソリンの不完全燃焼が起こりやすく、その結果、HC(炭化水素)が多く排出されてしまう(ガソリンは多様な炭化水素の混合物である)。自動車排出ガス規制をパスする環境性能を備え、さらにハイパフォーマンスを実現するというのは、かなり困難な挑戦のように思える。
しかし「プレビューデー スペシャルトークショー」にて、前田氏は次世代ロータリーエンジンについて、「我々の中には志の高いエンジニアがおります。彼らが一生懸命、日々改良を続けています」と語り、「(『RX-VISION』を)夢で終わらせるつもりで作っていません。みなさん応援してください」と力強く表明していた。
2年後の2017年は、「コスモスポーツ」発売から50周年という、ロータリー車のアニバーサリーイヤー。次回、東京モーターショーが開催されるのも同じ2017年だが、そこで記念すべき年にふさわしい発表があるだろうか? マツダの夢への挑戦を応援したい。