日本時間11月6日22時30分に発表された米10月雇用統計は、失業率が予想どおりながら7年半ぶりに5.0%へと低下し、非農業部門雇用者数(NFP)は前月比27.1万人増と予想(18.5万人増)を大幅に上回った。また、平均時給も前月比+0.4%、前年比+2.5%と予想(+0.2%、+2.3%)以上の伸びを示すなど、全体的に良好な結果であった。これを受けてドル/円相場が8月21日以来約2カ月半ぶりの123円台へと急伸するなど、外為市場ではドルが全面的に上昇した。

なお米FF金利先物は、この雇用統計発表後に12月米連邦公開市場委員会(FOMC)における0.25%利上げの可能性を68%織込んだ水準に上昇しており、秋口に一時萎みかけていた年内の利上げ期待は、ここに来て急速に再燃する格好となっている。米10月雇用統計は、利上げ懐疑派の口を封じてしまうほど強い内容だったようだ。

米FF金利先物 12月利上げ(0.25%)織込み度合い

平均時給が前年比で2009年7月以来の高い伸び

その内容をあらためて確認すると、失業率はトレンドに沿った改善が続いており、ついに一部の米連邦準備制度理事会(FRB)当局者が「完全雇用」と見なす5.0%に低下した。また、過去2カ月間伸びが低迷していたNFPは、今年3回目の25万人超えとなり、3カ月平均でも18.7万人増へと持ち直しを見せた。さらに、平均時給が前年比で2009年7月以来の高い伸びを示した点は見逃せない。数年来の雇用情勢改善が、ここに来て賃金上昇を加速させ始めた可能性すら感じられる力強い伸びであった。

米失業率と非農業部門雇用者数

米国平均時給

1カ月前の当コラムで、「12月FOMC(15-16日)までにあと2回発表される雇用統計が米国の年内利上げの『追試』になると考えている」と指摘したが、その第1回目の「追試」については、高得点であっさり突破したと言えるだろう。12月4日に発表される米11月雇用統計が、12月FOMCでの利上げに向けた「最終試験」との見方は変わらないが、今回の雇用統計の好結果を受けて、合格へのハードルは大きく下がったと見て良いだろう。その分だけ、ドルの上昇基調が続く公算も大きくなったと考えている。

執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya