仕事の休憩中に菓子や弁当を食べるなど、意外と飲食する機会が多いオフィスのデスク。でも、オフィス内環境はどれくらいキレイなのだろうか。今回は、ライオンのヘルスケアマイスター・山岸理恵子さんに、オフィスの汚れについて聞いてきた。
オフィスはこんなに汚れている!
「実は、オフィスには微生物や食物残渣(ざんさ)などの汚れがたくさん。特にキーボードは、1日に50人くらいが使っているトイレのドアと同じくらい汚れています」と山岸さん。
食品工場やレストランの厨房(ちゅうぼう)などの衛生検査に用いられるATPふき取り検査によると、キーボードは6,512、マウスは4,901と合格点である1,000を大きく上回り、非常に汚れているという結果になっている。トイレの入り口ドアにおける内側の取っ手が6,445であることと比較すると、キーボードはほぼ同程度。つまり、キーボードをたたいた手でそのまま菓子をつまんでいる人は、トイレのドアを触った後につまむのと同じということになる。
また、外回りなどの際に車の中で飲食をする人も多いだろう。車の中の汚れはデスク周りよりも深刻だ。
「自動車の中を対象にしたATPふき取り検査では、ステアリングが5万9,900と桁違いの結果が出ました。シートやシートベルト、パワーウインドウのスイッチなど、あらゆる場所が共用トイレ以上の汚れを示しています」。
お手ふきのポイントは「指」
オフィスや車が汚れているとわかっても、飲食をまったくしないで過ごすことは難しいもの。では汚れに対して、どのように対策をすればよいのだろうか。
「まずは、キーボードやマウスをふくなど、手が触れるような場所をしっかりと掃除することです。除菌効果のあるシートなどを使うのもおすすめです。丸洗いなどができないものに便利ですよ」。
飲食する前にお手ふきシートなどで手を清潔にしておくことも大切だ。しかし、せっかくのシートもちゃんと使わないと十分な効果は得られないそうだ。多くの人は手の甲や手のひらを中心にふいてしまい、直接食べ物が触れる可能性が高い指先をふかない人が意外と多いという。
また、ネイルをしている女性はしていない女性に比べて爪が長めであることから、爪の裏に汚れがつきやすい。ATPふき取り検査 では、ネイル無しの女性の爪は4,284だったのに対し、ジェルネイルをしている女性の爪は5,707と高い値を示した。どちらも、合格とされる1,500(体の場合はヒト由来の有機物が反応するため基準値が高い)を大きく上回っているので、いずれにしても汚れのたまりやすい「指の腹から爪のはえぎわ」を意識してふくように心がけたい。
もちろん清潔な手を保つには、お手ふきシートだけでなく正しい手洗いも重要だ。外出後に手を洗う際、ついつい水だけでさらっと洗ってしまいがちだが、ATPふき取り検査では、水だけの手洗いでは3,912と不合格の値。一方、ハンドソープで洗った場合は、561と基準をクリアした。しっかりと石けんを泡立てて、手首から手のひら、手の甲、指先と丁寧に洗い、流水でしっかりと洗い流すようにしよう。
「体調を崩すなどして免疫が弱っているときは、不特定多数の人が触れる部分の汚れから病原体に感染してしまうこともあります。インフルエンザなどの流行期には、さらに注意が必要です」。
とはいえ洗いすぎも肌への負担となるので、外から戻った後や飲食の前、トイレの後など、適切なタイミングで手洗いをすれば十分対策になる。身の回りの汚れを意識して、手や指をしっかりキレイにすることを意識してみてはいかがだろうか。
取材協力: ライオン ヘルスケアマイスター・山岸理恵子さん
ボディーソープほか、スキンケア商品の開発に長年携わった後、現在のヘルスケアマイスターとなる。商品開発の経験を生かし、主にライオン快適生活研究所にて健康で快適な暮らしのための情報発信に尽力している。