規律正しく、時間を守り、責任感がある。日本人に共通するこれらの特徴に大きく関わるのが学校教育だとベトナム人のチャンさんは話す。ベトナムではまだ珍しいインターナショナル教育の普及にも熱心で、異なる文化のスタッフが衝突しても「お互いの良いところを尊重し、より高め合うためのステップ」とポジティブにとらえる彼女に話を聞いた。
■これまでのキャリアと今の仕事について教えてください
ハノイ市内でベトナム人向け日本語学校の「日本語センター」や、インターナショナル幼稚園&小学校を運営する企業の副社長として働いています。
社長は4つ上の姉です。彼女は大学で日本語や日本文化について学んでおり、日本語センターや、ハノイではまだ浸透していなかったインターナショナル教育を取り入れた学校を作りたいと、夢に向け準備を進めていたんです。
私自身は学生時代に経営について学んだものの、日本語が話せませんし、日本に行ったこともありません。ですが姉から、日本人の仕事に向けた真剣な姿勢や、振る舞い方などの話を聞いて、ベトナムに日本の教育やその他先進国の教育システムを導入したいという考え方に共感し、卒業と同時に現職に就きました。
会社を始めた2005年にはベトナム人向けの日本語センターが1校のみで、社員数は5人でしたが、10年間で日本語センター1校、私立のインターナショナル幼稚園2校、小学校1校の計4校に増え、現在は約200人の正社員を抱えています。幼稚園は、ハノイとハイフォンに1校ずつあり、ハノイの園は、ベトナム人用、日本語教育、英語教育と3コースから選べるシステムで、ハイフォンにある園はベトナム人用のコースのみです。在住日本人の方の中には、当社のインターナショナル幼稚園にお子さんを通わせている方も沢山いらっしゃいます。
■現在のお給料はどうですか?
基本給は1,500ドルです。いろんな事業を複合的にやっているので、それらの売り上げが良い時はさらにプラスされる時もあります。現在の金額で満足していますし、頑張りで給料が上がっていく可能性が大いにあるので、事業拡大していく意欲が高められていいです。
■今の仕事で気に入っているところ、満足を感じる瞬間は?
先に述べた通り、設立当初は日本語センター1校のみでしたが、事業も多角化し学校も4校まで増え、小学校と幼稚園の児童数も400人以上になりました。年々、着々と事業規模を拡大できていることが嬉しいです。事業が拡大しているということは、日本や海外の進んだ教育方針を受けられるベトナムの子どもが増えているということですからね。今までなかった新しいことに挑戦していますが、事前に念入りに調査しているので、自分たちの事業に自信を持って仕事が出来ています。
■逆に今の仕事で大変なこと、嫌な点は?
インターナショナルな事業をやっているので、現地のベトナム人スタッフと諸外国のスタッフとの人間関係や満足度を調整することが大変ですね。
スタッフ200人のうち、日本人が12人、アメリカ人が22人、残りは全員ベトナム人です。やはり国の違いで、子供との接し方やスタッフ同士のコミュニケーションの取り方などが異なり、悪気がなくとも不愉快な思いを与えることもあるようです。日本人とベトナム人の間のことで言えば、「時間」に関する感覚の違いでしょうか。ベトナム人スタッフには、日本人のように時間厳守を呼びかけるようにしています。
でも異文化間で衝突が起こるのは当たり前ですし、お互いの良いところを尊重し合あえれば、より高め合えると信じていますので、トラブルも前向きに捉えています。
■日本人のイメージは? あるいは理解しがたいところなどありますか?
私は通訳を介して日本人と一緒に仕事をしていますが「時間を守る」と「責任感を持つ」の2点が、日本人と仕事をする上ではとても大切だと感じています。私自身はもちろんのこと、他のベトナム人スタッフにも徹底させ、信頼関係を築くことが重要だと思っています。また幼稚園での出来事で、理解し難いというよりは驚いたことが1つあります。園児が園で何も食べずに帰っても、日本人保護者からは先生に対しお咎めがないのです。ベトナム人保護者の場合ですと「なぜ食べさせてくれなかったの!」とほぼクレームになりますね。
■最近TVやラジオ、新聞などで見た・聞いた日本のニュースは何ですか?
日本の海外投資には興味があってたまにチェックしています。特にベトナムとの関係はどうかということには、気を遣って見ていますね。
■ちなみに、今日のお昼ごはんは?
昼ごはんは牛肉のラーメンでした。幼稚園と小学校が隣接したオフィスで仕事をしているため、子供たちのメニューとは異なりますが、従業員用のランチも手作り給食です。ちなみに日本人向けコースの園児には、日本食を提供していますよ。
■休日の過ごし方を教えてください
私の休みは日曜日だけなので、休みの日は自分の子供と沢山の時間を過ごしたいと思い、家族でいろんなところへ行くようにしています。
■将来の仕事や生活の展望は?
刺激を得るために、仕事でもプライベートでも海外旅行に行ける機会を増やしたいです!