米FRB、次回12月15-16日の会合での利上げの可能性を強く示唆
10月28日、米FRB(連邦準備制度理事会)はFOMC(連邦公開市場委員会)において、金融政策の「現状維持」を決定した。ただし、その声明文は次回12月15-16日の会合での利上げの可能性を強く示唆するものだった。
今後の金融政策運営について、声明文は「次回の会合で利上げするのが適切かどうか判断するため、FOMCは最大雇用とインフレ率2%という目的に向けての進捗を検証する」と宣言した。前回9月の声明文では「現在の政策金利をどれだけ長く維持するか判断するため、(以下同じ)」だった。つまり、FOMCの基本スタンスが「維持」の判断から「利上げ」の判断へとシフトしたことがうかがえる。また、タイミングを「次回」と特定したのは、これまでのFOMCのやり方からすれば極めて異例だ。前週、理事会後の会見でドラギECB総裁が「12月(3日)に追加緩和を検討する」と明言したことに触発されたのかもしれない。
なお、今回の決定は9対1で、リッチモンド連銀のラッカー総裁が前回同様に「即座の利上げ」を主張して反対票を投じている。
中国をはじめとする世界経済の先行き、喫緊の懸念ではなくなっている可能性
声明文冒頭の景況判断では、個人消費や設備投資が「堅調に増加」とされた(前回は「緩やかに増加」)。雇用については、増加ペースが「減速した」としつつも、「しかしながら、労働資源の活用度の低さは解消された」と前回同様の総括だった。最近の雇用統計の弱さに大きな懸念は示されなかったことになる。物価についても、市場のインフレ期待は「わずかに低下した」と評価され(前回は「低下した」)、インフレ率の低下に懸念を強めたとの印象は受けない。
大いに注目されたのは、前回の声明文にあった、「最近のグローバルな経済・金融情勢は、経済活動をいくぶん抑制する可能性があり、目先のインフレ率に一段の下方圧力を加える公算が大きい」との一文が削除されたことだ。前回の会合では、8月の人民元切り下げや上海株の急落など、いわゆる「チャイナ・ショック」の悪影響が強く懸念された。中国をはじめ世界経済の先行きは依然として不透明ながら、株式市場がやや落ち着きを取り戻したこともあって、喫緊の懸念ではなくなっているのかもしれない。
政策金利(FFレート)先物が織り込む12月の利上げ確率は、FOMC前日の34.7%から当日の結果発表後は46.2%に上昇した。つまり、金融市場は12月の利上げをほぼ五分五分とみているということだ。次回の会合までに、2度の雇用統計を含め多くの経済指標が発表される。それらの結果次第で、その確率が50%を大きく超えてくる可能性は十分にありそうだ。
執筆者プロフィール : 西田 明弘(にしだ あきひろ)
マネースクウェア・ジャパン 市場調査部 チーフ・アナリスト。1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストとして高い評価を得る。2012年9月、マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。市場調査部チーフ・アナリストに就任。現在、M2JのWEBサイトで「市場調査部レポート」、「市場調査部エクスプレス」、「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、TV・雑誌など様々なメディアに出演し、活躍中。