説明書を読まなくても使い方がわかるのが、iPhoneの魅力であり強みです。しかし、知っているつもりでも正しく理解していないことがあるはず。このコーナーでは、そんな「いまさら聞けないiPhoneのなぜ」をわかりやすく解説します。今回は、「iPhone 6sに"当たりはずれ"があるってどういうこと?」という質問に答えます。
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iPhone 6sの"当たりはずれ"とは、その頭脳に相当するシステム・オン・チップ(SoC)の「A9」に2タイプあることではないでしょうか。実は、iPhone 6s/6s PlusのSoCはスペックシート上同じ「A9」ですが、実際には2つのメーカーが微妙に異なる仕様の「A9」を製造しています。
A8までのApple AシリーズSoCは1社が製造を請け負っていましたが、A9では2社に分散されました。その理由は明らかにされていませんが、世界的な人気を誇るiPhoneは初期ロット時点で相当の台数を用意しなければならず、その数に見合うSoCを確保することが難しかったからだと推測されます。
結果として、Appleは韓国・サムスンと台湾・TSMCの2社に発注を行いましたが、生産ラインなどさまざまな要因により違いが生じました。技術解析サービス企業であるChipworks社の公式ブログによれば、サムスン製(APL0898)は14nmでTSMC製(APL1022)が16nm、ダイサイズにも違いがあるとのこと。驚いたことに、AppleはiPhone 6s/6s Plusを設計するにあたり、異なるSoCそれぞれに最適化した設計を並行して進めたようです。
基本設計が同じとはいえ物理的な違いがありますから、両者の性能はまったく同一ではありません。他の条件が同じ場合、14nmルールでダイサイズが小さいサムスン製のほうが温度上昇が速く、そのぶんバッテリーの減りもわずかながら速いと考えられます。海外のIT系ニュースサイトArs Technicaでは、A9には2種類のSoCがあり、2~3%程度とわずかながらバッテリーのもちに差が生じうることをAppleが認めたと伝えています)。
とはいえ、SoCの処理能力自体に差はなく、高い負荷をかけ続けるなど特殊な使いかたをしないかぎり、バッテリーにも性能差は現れません。当たり外れがあるとすれば、液晶パネルにムラがあるなどの初期不良のほうがよほど影響は大きいといえます。