「第44回東京モーターショー2015」プレスデー初日の28日、国内・海外主要メーカーによるプレスブリーフィングが行われた。トヨタ自動車は新型「プリウス」や「S-FR」「C-HR Concept」などを発表。ゲストにイチロー選手が登壇するサプライズもあった。
トヨタブースのステージ上には、年末に市販開始予定の次世代ハイブリッド専用モデル「プリウス」、世界初公開の新世代ライトウェイトスポーツコンセプト「S-FR」、フランクフルトモーターショーに続いての出展となる新世代コンパクトクロスオーバー「C-HR Concept」の3台が並んだ。その他にも、燃料電池自動車「FCV PLUS」、人とクルマの関係性を改めて提案するコンセプトカー「KIKAI」など、「未来のモビリティライフ創生に挑戦するトヨタの姿勢」を提示した車両が展示されている。
28日14時15分から始まったプレスブリーフィングに登壇したのは、トヨタ自動車代表取締役社長の豊田章男氏。「"WHAT WOWS YOU?"(あなたの心を動かすものは何ですか?)が今回のキーワード。展示車両には、『もっと良いクルマをつくりたい』との思いを胸に、自分たちの考える"WOW"を形にしようとしたという共通点があります。それは同時に、いまの非常識を次の時代の常識にするチャレンジでもあります」と述べた。
「ハイブリッドカー。燃料電池車。いずれもかつては非常識でした。やがて常識となり、居心地の良い場所となりましたが、そこから抜け出さなければ未来を切り開くことはできません」と豊田氏。「『できない』『無理だ』とあきらめることはいくらでもできます。しかしゼロ打数ゼロ安打では、世の中なにも変わらない。ヒットが打てるかわからなくても、バッターボックスに立たなければ"WOW"は起こせないのです。それを私たちに教えてくれた方がいます」との紹介を受け、イチロー選手がゲストで登壇した。
登壇直後、「マイアミマーリンズのイチローです。……野球やってます」と挨拶し、会場の笑いを誘ったイチロー選手。「じつはクルマの運転、全然うまくありません。でもクルマが大好き。章男社長とは何度かお会いすることがあり、共感できるところが多いと感じていました」と、豊田氏との接点を明かした。「僕は毎年、バッティングフォームを変えるようにしています。いまより前に進むために、つねに新しいチャレンジが必要と信じているからです。その結果、うまくいかないこともたくさんあります。前進と後退を繰り返し、少しだけ前に進めたなら、後退も成長に向けた大切なステップではないか」とも語った。
その上で、新型「プリウス」で採用した「TNGA」("TOYOTA New Global Architecture"。トヨタが全社を挙げて取り組むクルマづくりの構造改革)に対し、「トヨタがバッティングフォームを大きく変えてきたなと思いました」とイチロー選手は評価。「トヨタの首位打者ともいえる『プリウス』で、大胆にフォームを変えてきた。世界はまったく違いますが、やっぱりどこか僕と似ている気がします。トヨタのチャレンジがどんな"WOW"を起こすのか、注目しています」と話し、最後は「信じられない緊張感の中、ご清聴ありがとうございました」と、イチロー選手らしからぬ言葉で挨拶を締めくくり、再び会場の笑いを誘った。
その直後、豊田氏から「(今季最終戦での)ピッチャー良かったよ」と声をかけられたイチロー選手は、「ピッチャーが一番大きくフォーカスされたという辛いシーズンでしたけれども……」と苦笑いしつつ、「前に進んでいきたいと思います」とコメントしていた。