10月5日から8日まで、フランス・カンヌで開催された、世界中のドラマやアニメが売り買いされる見本市「MIPCOM」(ミプコム)。この現地レポート前編では『マツコとマツコ』や『EXILEカジノ』など、日本のバラエティが海外で注目された現地の様子を伝えた。今回の後編では、世界に打って出た北海道や大阪、福岡のローカル番組の取引現場を追いながら、引き続き知られざる番組取引の世界をレポートする。

世界各国のバイヤーが集結するMIPCOM会場の正面入口

「JAPAN」の看板掲げた地域パビリオンが初登場

今年はMIPCOMの会場に初の"日本地域パビリオン"が登場した。NHKをはじめ、日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビの在京キー局は、毎年会場にブースを構えている。NHKは綾瀬はるか主演の4K制作ドラマ『精霊の守り人』や、『SONGSスペシャル 福山雅治「POPSの遺伝子」』などを目玉に並べ、民放各局も前編で紹介した『マツコとマツコ』や『EXILEカジノ』、『SASUKE』に『とんねるずのスポーツ王は俺だ!!』などのバラエティから、『天皇の料理番』『花咲舞が黙ってない』などのドラマや、『ドラえもん』『NARUTO』といったアニメを世界に販売している。

しかし、多くの地方ローカル局にとって海外進出はまだ日が浅い。そこで、各局が系列を越えて束となり、「JAPAN」の看板を掲げた"日本地域パビリオン"として出展することにした。ここには、札幌テレビ、北海道放送、北海道テレビ、メ~テレ、京都放送、広島テレビ、南海放送、九州朝日放送の計8局が参加。各局テーブルは1つだけというスペースで、商談を進めていた。

「JAPAN」ブースでの舞妓ライブ

『福岡恋愛白書』の紹介パネル

番組ラインナップは、大泉洋出演のバラエティ『おにぎりあたためますか』(北海道テレビ)や、TEAM NACSのリーダーによる教養番組『森崎博之のあぐり王国北海道』(北海道放送)、AKB48などが主演を務めるシリーズドラマ『福岡恋愛白書』(九州朝日放送)など。地域で作られ、放送されてきたローカル番組を、世界のテレビ局相手に売り込んでいた。

世界100カ国以上が参加するMIPCOM会場には、このような日本の地域パビリオンに限らず、国ごとにまとまった、色とりどりのナショナルパビリオンのブースが立ち並んでいる。例えば、中国は大きなスペースを確保して存在感を見せつけており、新興国のアフリカ、ロシア、マレーシアもパビリオンを展開。国が手厚い助成措置を講じるフランスやカナダ、韓国あたりも、日本の数倍広いスペースを有していた。

このような各国に比べると、MIPCOMでの日本のパビリオンブースの登場は、遅ればせながらといったところ。広々スペースの中国や韓国ブースを目の当たりにした、日本の参加者から「オールジャパン」体制を要望する声が強まり、政府が推し進めるいわゆる「クールジャパン」の一環で、テレビ番組の海外展開を強化する施策と相まって、今回の地域パビリオンが実現したのだ。

"地方創生"が海外展開のキーワードにも加えられて、取り組み始めたローカル局も多い。番組が外国人観光客の呼び水となる効果が期待され、実際に北海道に訪れる外国人観光客が増えたのは番組効果によるものと言われている。番組を見て興味を持ってもらい、北海道を訪問することが、アジアではちょっとしたブームになっている。

中国のブース

トルコのブース

紳助、やすきよ、ハイヒール…関西芸人の番組企画も世界へ

国内全国区でヒットした『水曜どうでしょう』のようなものから、地元でひそかに人気を集めるものまで、ローカル発番組はいろいろある。その中でも、準キーと呼ばれる大阪のテレビ局では、絶大な人気を誇るローカル番組も多く、コテコテの大阪発番組を海外に売り出している現場を見ることができた。

読売テレビと朝日放送(ABC)は、それぞれ単独でブースを出展。読売テレビは『名探偵コナン』や『宇宙兄弟』などの売れ筋アニメから、ドラマ、バラエティまでそろえており、前編で触れた、バラエティのトレンドの売り方であるフォーマットセールス(番組企画の販売)用には、島田紳助が司会を務めていたバラエティ番組『オールスターの皆様に芸能界の厳しさ教えます』を目玉にアピールしていた。

一方のABCは、関西ローカルで放送されている、漫才コンビ・ハイヒールの冠番組『ビーバップ! ハイヒール』をはじめ、横山やすし・西川きよし司会の往年の人気番組コーナー『フィーリングカップル5対5』などのフォーマットをラインナップ。イギリスやスウェーデン、トルコなどの会社とタッグを組んで、世界中に売り出し中だ。

ABCコンテンツ事業部の井上修作氏は「海外マーケットではキー局もローカルもない。やりがいのあるおもしろい世界だと思う」と意欲的。世界ヒットする番組は氷山の一角ではあるが、実際に番組や売り方次第で、チャンスは誰にでもあるといった雰囲気が、会場に漂っている。

読売テレビのブース

朝日放送(ABC)のブース