中国共産党の「五中全会」、大型の景気対策が打ち出されるか!?

8月以降に強まった世界経済への懸念や、金融市場の動揺の背景は中国だ。直接のきっかけは、民間調査による製造業景況感指数がリーマンショック後の2009年3月以来の水準まで低下したことだった。9月16-17日に開催された米FOMC(連邦公開市場委員会)が利上げを見送った主たる理由も中国だった。FOMC直後の記者会見で、イエレン議長がその点を明言している。

報道によれば、10月26-29日に中国共産党は中央委員会第5回全体会議、いわゆる「五中全会」を開催する。その中で、第13次経済5か年計画(2016-20年)が検討される。金融市場では、そこで大型の景気対策が打ち出されるとの期待が高まってきた。「2兆元規模」との具体的な数字を出した憶測報道もみられる。リーマンショック直後、2008年11月のG20(20か国財務大臣・中央銀行総裁会議)を前に、中国が打ち出した景気対策が当時のGDPの10%を超える4兆元規模だったことから、仮にその半分の2兆元規模の景気対策が打ち出されるとしても、金融市場は大いに歓迎しそうだ。

もっとも、リーマンショック直後の景気対策は、道路や鉄道などのインフラ投資、中低所得層向け住宅投資などが中心だった。中国の過剰投資、過剰設備が指摘される昨今、同じような景気対策が打ち出されるとは考えにくい。産業構造の高度化・サービス化、成長産業の育成、投資から消費へのシフトなどを促す内容となるのではないか。それは奇しくも、5年前の第12次5か年計画で示された方針と重なるものでもある。

4-6月期の実質GDP成長率、けん引したのはサービス業

ところで、中国の4-6月期の実質GDP成長率は前年比+7.0%となり、前期と同じ、かつ政府の成長目標と合致するものだった。景気実態をより正確に反映すると言われてきた電力生産量や鉄道貨物輸送量が大幅に伸びを鈍化させ、あるいは前年比マイナスとなっていたため、GDPは「出来過ぎ」との批判も聞かれた。

中国の実質GDP

GDP統計が「正しい」ことを前提とすれば、4-6月期の経済成長をけん引したのは、サービス業だった。サービス業が前年比8.5%伸びる一方で、鉱工業・建設は同6%へと鈍化した(なお、GDPに占める鉱工業・建設の割合は先進国で2-3割、中国で5割弱)。その意味では、経済構造改革が進展しているのかもしれない。

ただし、4-6月期に大きく伸びたのは、サービス業の中でも「金融仲介」だった。株価が6月のピークに向けて駆け上がっていく過程で、出来高が急増しており、そのことがGDPを押し上げた可能性がある。

10月19日に発表される7-9月期のGDP、「五中全会」にも影響

株価は6月中旬から急落しており、出来高も細っている。10月19日に発表される7-9月期のGDPでは、「金融仲介」が足を引っ張るかもしれない。それとも、再び「出来過ぎた」数字が出てくるのだろうか。GDPの結果は、その7日後に開催される「五中全会」にも影響を与えるかもしれない。大いに注目だ。

執筆者プロフィール : 西田 明弘(にしだ あきひろ)

マネースクウェア・ジャパン 市場調査部 チーフ・アナリスト。1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストとして高い評価を得る。2012年9月、マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。市場調査部チーフ・アナリストに就任。現在、M2JのWEBサイトで「市場調査部レポート」、「市場調査部エクスプレス」、「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、TV・雑誌など様々なメディアに出演し、活躍中。