シャープはCEATEC JAPAN 2015開催前日の10月6日、報道関係者向けに同社ブースの展示内容を公開した。ブースではロボット電話「RoBoHoN」のほか、メインテーマと位置づけている「ココロプロジェクトゾーン」に大きなスペースを割いている。
ココロプロジェクトは独自のAI技術であるココロエンジンを活用するとともに、音声認識を通じて、家電製品と対話しながら、ひとり一人のユーザーにココロからおもてなしを行い、ライフスタイルに寄り添う家電を目指すもの。様々な製品にココロエンジンを搭載する横断型プロジェクトだ。
同社の「ともだち家電」やAQUOS、エモパーといった技術や製品を結ぶとともに、生活家電、モバイル、AV家電の技術を融合することでココロエンジンを深化させるという。ブースでは、ココロプロジェクトの具体的な製品として、RoBoHoNのほかに、プラズマクラスター冷蔵庫「SJ-TF50B」、オーブンレンジ「ヘルシオ AX-XP2WF」、液晶テレビ「AQUOS」の新UI、スマートフォン「AQUOS」のエモパー搭載モデルを展示。
冷蔵庫のSJ-TF50Bでは、「期限の近い食材を声で知らせたり、食材を音声対話で登録できる買い物メモ機能、手元にある食材を声で伝えると調理メニューを検索してくれる機能」などを実現。また、液晶テレビAQUOSでは、「画面がオフでも人が近づくと電源が入り、話しかけると、その人の声を認識して、好きなコンテンツの最新版を自動的に表示してくれるといった使い方ができる」という。
【動画】冷蔵庫「SJ-TF50B」のデモ。「アサリ、入れたよ」「アサリだね」という会話が成立している (音声が出ます) |
8KモニターやFFDなどの次世代技術も
「AQUOS 4K NEXT & 8K映像モニターゾーン」では、独自の4原色技術と超解像8Kアップコンバート回路を搭載した「AQUOS 4K NEXT」の第2世代製品となる「LC-70XG35」と、市販品として世界で初めて8K(スーパーハイビジョン)規格に準拠した85型IGZO液晶パネル採用の「LV-85001」を展示。高精細、広色域、高コントラストを実現するとともに、波面合成による臨場感のある音場を実現してみせた。
「8Kの優れた映像には、それに伴った音が必要。だが、そのために個人が大きな投資をするのでは意味がない。波面合成技術はコスト面でも革新的なものになる。また、85型IGZO液晶パネル採用の8K映像モニターは、BtoB用途での利用を想定したものであり、CGをリアルタイム表示し、細かいディテールや質感まで再現できる」(シャープ・水嶋繁光会長)という。
また、デザインを革新するディスプレイとして注目を集めているフリーフォームディスプレイ(FFD)の展示にも力が入っている。とくに注目を集めているのが、FFDの進化版として初公開した曲面型FFD。「応用範囲は幅広く想定できる。これまでのFFDの可能性をさらに広げるものになる」(水嶋会長)として、自動車へのダッシュボードへの搭載など期待が膨らむ。
さらに、液晶の向こう側が見え、ショーウインドウなどに利用できるシースルーディスプレイや、鏡面となっているディスプレイに様々な情報が表示できるミラーディスプレイなども展示している。
新ビジョン「AIoT」
一方、シャープはプレス向けの説明会において、新たな家電製品の事業ビジョンとして、モノの人工知能化を目指すことを打ち出した。
シャープ 代表取締役兼専務執行役員の長谷川祥典氏は、「2016年度から、AIoTの製品展開を本格化する。多くの家電をクラウドに接続して、人工知能化することで、機能や動作が快適になる」と切り出し、「これまでの家電メーカーは、ハードウェアを提供してきたが、クラウドサービスを一体提供することでユーザー価値が飛躍的に向上する。IoTは、スマホでエアコンをコントロールしたり、家電の状況を確認するといった使い方が多いが、AIoTでは人工知能を活用することで、食材から今日の料理を提案するなど、それぞれのお客様にあったサービスを提供できる点が異なる」とした。
家電の人工知能化においては、これまでのココロエンジンで培ってきた「音声対話」、エモパーなどで培ってきた「センシング・人工知能」に加えて、年齢や性別だけでなく、暑がりやサッカー好きといった「ゆるやかな嗜好」を学習する「嗜好理解」を活用するという。「わが家流に快適に成長し、その場ですぐにサービスが利用できる家電」を目指すという。
また、「AIoTには、サービス事業者にも参加してもらえるものになる。事業規模は未知だが、大きなビジネス成長が見込める。サービスの最前線のタッチポイントにあるのが家電。未開拓のビジネス領域に踏み出すことになる」と語った。なお、現時点では、AIoTの事業規模などについては明確にはしていない。