大学に進学している学生の約半分が受給している奨学金。大学卒業後、就業してからも返済している人が多いのではないでしょうか。ご自身のライフプランに合わせ、奨学金を返済していくことが重要なポイント。今一度奨学金について見直してみましょう。
独身時代は問題なくても……
日本学生支援機構の「学生生活費調査(平成24年度)」によると、大学(4年生昼間部)に進学している学生のうち52.5%の人が何らかの奨学金を受給しています。奨学金の種類や額にもよりますが、奨学金の返済は、開始から終了するまで12年から20年という長期間続く支出。読者の皆さんの中にも、現在奨学金を返済しているという人も多いでしょう。
例えば、大学4年間にわたり月額5万円を利息付の第二種奨学金で貸与を受けていたとします。利息は「利率固定方式」と「利率見直し方式」のうち申し込み時に選択した一方で計算されますが、利率固定方式を選択した場合、貸与終了時に決定された利率が返還が終了するまで適用されます。現在の固定方式の年利率は0.69%と低めですが、現在返済中という方の中には1.5~1.9%の利率が適用されている人もいるでしょう。総額240万円の貸与を受けた場合、返済期間は15年間となり、毎月約15,000円の返済義務が課されているでしょう。夫婦共に同条件で貸与を受けている場合は、毎月約3万円が家計の固定支出として出て行くことになります。
独身時代は各自問題なく返済できていたとしても、20歳代後半から30歳代になって、結婚・子育て・ファミリーカーへの買い替え・マイホームの購入など、ライフプランの中で支出項目および金額が大きく変化してくると、現在の家計や将来への貯蓄にも影響を及ぼしかねません。特に女性が奨学金を受給していた場合で、出産・育児などで一時的にでも収入が途絶えると、3万円の支出は家計への影響度も高いです。
しかし家計が厳しいからといっても、返済を甘く見るのはNG。延滞金(平成27年現在、年5%)が課されたり、長期滞納者には法的措置も取られます。個人信用情報機関に登録され、俗に言うブラックリストに載るのもその1つです。慌てて滞納分を払っても、一旦ブラックリストに載ると5年間は抹消されません。クレジットカードや住宅ローンを申込みたくても拒否されてしまう可能性もあるのです。
そのためにも返済を怠らず、家計全体で必要な支出や貯蓄をする工夫が必要です。今一度家計を見直し、毎月の出費に無駄がないか確認しましょう。通話料や外食費など縮小できる支出は縮小していきましょう。
共働きのうちは早く完済することを目標に、ボーナスなどで繰上げ返済を検討するのもその1つです。繰上げ返済は一部でも全部でも可能ですが、一部返済の場合は期間短縮となり、繰上げ期間分の利息が免除されます。ただし他に返済すべきローンがある場合は、奨学金にこだわる必要はありません。借入金利・返済期間・残高を考慮して節約効果が最も高いものを繰上げ返済するようにします。
夫婦の一方が育児に専念する期間がある場合は、奨学金の返済が家計を圧迫してしまう可能性もあります。仕事復帰までの間の奨学金返済を減額する「減額返還制度」も検討してみましょう。一定期間返済を停止して先送りにする「返還期限猶予」という方法もあります。いずれも申請をして承認を受ける必要がありますが、延滞にならないので安心です。
※画像は本文と関係ありません。
著者プロフィール
武田明日香
エフピーウーマン所属ファイナンシャル・プランナー
南山大学経済学部卒業後、大手印刷会社に入社。2010年に、法人営業の仕事をしながら自己啓発のためにファイナンシャルプランナーの資格を取得。「女性がライフステージで選択を迫られたときに、諦めではなく自ら選択できるための支援がしたい」という想いから、2013年にファイナンシャルプランナーに転身。日本テレビ「ZIP!」やTBSテレビ「あなたの損を取り戻せ 差がつく!トラベル!」、「Saita」「andGIRL」等の雑誌、「webR25」「わたしのマネー術」等のウェブサイトなど幅広いメディアを通じ、お金とキャリアの両面から女性が豊かな人生を送るための知識を伝えている。
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