死から4年を迎えようとしている今でも、テクノロジー業界に限定されず、世界のどこかでその名が語られているSteve Jobs氏。その後を継ぐのは並大抵のプレッシャーではないはずだが、AppleのCEO、Tim Cook氏はJobs氏とは違ったアプローチでその名声を築いている。
最新のiPhone 6sとiPhone 6s Plusの販売台数が過去最高の1300万台を記録した週末が明けた9月29日、Cook氏は米サンフランシスコで開催されたBoxのイベントに登場。Box CEOのAaron Levie氏と、エンタープライズ市場から飛行機まで、さまざまな議題のトークを交わしていた。前編では、エンタープライズの話を中心にお伝えする。
エンプラでは提携に注力するApple
Cook氏はこの日、黒のジーンズ、濃紺のセーター、黒いナイキシューズ姿で登場し、親子ほどの年の差のあるLevie氏が冗談交じりに早口で発する質問に穏やかに答えた。
Cook氏が他社のイベントに出席することは珍しい。BoxとAppleは正式に提携を発表しているわけではないが、クラウドファイル同期・共有、コンテンツ管理サービスという観点でいえば、BoxとAppleが目指す先は同じで、これによって「エンタープライズを変える」ことだ。BoxはiOSのみに向けたサービスも発表している。
Appleとエンタープライズというキーワードで忘れてはならないのは、2014年に業界を驚かせたIBMとの提携だ。またAppleは、1カ月前にCisco Systemsとも提携を発表したばかりだ。
Levie氏がエンタープライズ市場への見解を聞くと、Cook氏は、「私たちにしか作れない、これまでできなかった新しいことができるツールを作ること――これをこれまでずっとやってきた」と語る。
その上で、「これまでエンタープライズとコンシューマーの境界がしっかりしており、そこではわれわれはコンシューマーにフォーカスした。だが現在、(その境は曖昧になっており)エンタープライズカー(車)を買おうという人はおらず、端末も同じだ」と続ける。
以前から、家でも職場でも同じ端末を使いたいというニーズがあり、両社を繋げる存在を確実なものにしたのがiPadだという。
エンタープライズ市場にどうアプローチするのか――答えは「提携」のようだ。
「コンシューマーでやったのと同じように、エコシステムを構築する。(エンタープライズユーザーが)やりたいと思っていることが実現できるように」(Cook氏)
IBMとの提携は、エンタープライズが求めるアプリなど、市場固有のニーズを満たすためだという。CiscoやBoxも同じだ、とCook氏は続ける。
「Appleは素晴らしいプラットフォームを構築できるし、素晴らしい製品を構築できる。だが、財務サービス、ヘルスケアの細かいところ、といった業界固有の知識はないし、得意ではない。ここではIBM、Cisco、Boxなどとの協業を通じて、顧客に完全なソリューションを提供する。自社一社でやるような見解は持っていない。多くの場合で、Boxは私たちよりも早く、ニーズをキャッチするだろうし、IBMもやCiscoも同じだ」(Cook氏)