ハイパーなハイファッションを世界に発信したかと思えば、チープでキッチュ、フレンドリーと魅力的な二面性を持つのが香港。ある意味生活感のないアーバンシティである。そんな香港のもうひとつの"顔"といえば、観光客のいない超ローカルなエリアではないだろうか。そんなローカルに出合いたいならホンハム(紅「石勘」 ※「」で1字)へ。
究極のグルメを求めてバスに乗る
ホンハムへはチムサーチョイ(尖沙咀)エリアからから6番のバス(ミニバン)に乗って、終点の黄埔(ワンポア)で降りる。交通の状況にもよるが、せいぜい20分程度の乗車時間である。降り立ってみると、そこにはいきなり巨大な船。海辺でもないのに、船がどどーんと鎮座している。な……なにこれ? と眺めていると、出入り口から出てくる人は皆一様にスーパーの袋を携えているのであった。そう、これは単なるAEONの入り口なのである。
ホンハムは九龍側にある住宅地エリアで、香港在住の日本人も多く住んでいるという。地下鉄のMTRで行くならホンハム駅が最寄りだが、中心地の(ワンポアまでは歩くと10分ほどかかる。駅にそれほど近いわけでもないのに妙に開発が進んでおり、住宅街というより繁華街の雰囲気だ。実際、このエリアに住んでいない香港人たちもわざわざバスに乗ってやってくるのだといい、ローカル的注目エリアなのである。
香港人のお目当てはなんといってもグルメ。香港きっての美食家として名高い蔡瀾氏によるプロデュースのグルメビル「蔡瀾美食坊」があり、ここには究極の担々麺の店や有名な俳優がプロデュースしている店などが入居している。
テナントは蔡瀾氏による厳選ということなので、かなりレベルが高そうだ。ミシュランレストランのような高級な店ではなく、どちらかというと庶民的な店が多く、気軽に足を運べるため人気が高いのがうかがえる。日本のチェーンレストラン「ペッパーランチ」もあったが、蔡瀾氏のお眼鏡にかなったということだから、なんだか鼻が高い。
お目当ての担々麺の店はお休みだったので、香港有名歌手の譚詠麟(アラン・タム)の店、「左麟右李」へ。こちらは香港式点心の店で、モニターでずっとアラン・タムのコンサート風景が放送されており、ファンの人には二度おいしい店となっている。ここではぜひ、」人気メニューの「蝦●鮮蝦雲呑麺(海老のワンタンメン、●は「米子」を1字で)」(32香港ドル=約500円)をどうぞ。
ゴマ香るボリューミーなミルクプリン
さて、デザートは何にしようかな……と注文したい気持ちをぐっと抑え、ここは別の店へ。「芝麻緑豆」はチェーン店でもなんでもないが、わざわざこの店を目当てにやってくる人も多い、行列のできるスイーツ店だ。なにがそんなに人気かって、店名からも分かる通り。ゴマを用いたデザートである。
食後のデザートは専門店で! という人が多いため、夜、しかもディナーの後の時間帯が最も混む。そのため、夜になると材料のゴマを店の前で炒り始め、辺りはいい匂いが漂いさらに多くの人を誘い込むというわけだ。もちろんランチの後やおやつに、と食べに来る人も多いので、店は13:30の開店後からいつでも混み合っている。
この店の人気メニューは「芝麻蛋白燉鮮●(●は「女乃」を1字で)」で、ゴマのソースが香ばしくふんわりぷるぷるの食感のミルクプリン(20香港ドル=約310円)だ。サイズがけっこう大きいものの、甘さが控えめなのでぺろりと食べられる。冷たいのと温かいのと選ぶことができるが、地元の人はエアコンで冷えた身体を温めるために夏場でも温かい方を注文する人も意外と多いそうだ。
本当に気取らない雰囲気が楽しめる
このホンハムエリアは住宅街ゆえ、スーパーマーケットも大きいし市場もある。売られているものもいかにも中華。そして道行く人も、暑いからと洋服を胸のところまでたくしあげ太鼓腹をばーんと見せながらぷらぷらしているおじいちゃんとか、ミニチュアの扇風機を顔に当てながら歩くおばちゃんとか、こじゃれた若者やビジネスマンが闊歩するセントラルエリアなどとは全く違う雰囲気が楽しい。
食事の後は腹ごなしにぜひとも散策してみてほしい。あちこちで買い食いができるスナックが売られているので、おなかはどんどんいっぱいになる一方かもしれないが。
※記事中の情報は2015年8月取材時のもの