「ホームステージング」という言葉をご存知だろうか。2015年7月にはホームステージングを行う「ホームステージャー」の認定資格もスタートし、大手不動産仲介会社が取り入れる動きも出ている。ではどんなサービスなのか、解説していこう。

欧米で普及。不動産売買を助けるサービス

そもそも「ホームステージング」とは、中古住宅を魅力的に演出するためのサービスのこと。片付けや掃除を行って、家具や家電を配置しなおす。住宅を1円でも高く売るための工夫、お手伝いといっていいだろう。中古住宅の取引が盛んなアメリカやヨーロッパではメジャーなサービスだという。

一般的に住宅を購入するとき、買い主は物件見学を行うが、新築マンションや一戸建てのモデルハウスでは、プロのインテリアコーディネーターが家を少しでも広く、美しく見せるための演出を行っている。ただ、中古住宅の場合、個人が売り主のことも多く、「売り主が生活している空間」を見学することになる。そのため、買う側からすると「なんか室内が雑然としてイヤ」「売り主さんの生活感があり過ぎて、いいイメージが湧かない」となり、売り主が想定していた価格で売却できないことも多いのだ。

さらに、近年、住まいの売り主が高齢化しているため、「家を売りたくても、片付けが体力的にできない」「長年暮らしているので、汚部屋(おべや)になってしまった」といった深刻な「片付け問題」が背景にあり、今、急速に注目を集めているのだ。

空き家問題を解決する糸口になる?

ホームステージングを行うことで、売り主には、「売却価格が高くなる」「売却期間を短くできる」といったメリットがあり、実際に、18カ月間売れなかった空き家が5日で売れたという例があるという。一方で、買い主側から見ると、「気づかなかった中古住宅の良さ」を発見できるようになるといえそうだ。

一戸建てでもマンションでも、長年生活していた住まいのハウスクリーニングや室内の補修修繕などは、気力や出費を伴う。家具家電の配置変更となれば、体力も必要だ。素人が自分ですべてをやるのは難しいが、こうしたホームステージングでプロに依頼できるのであれば、「今の住まいを売って、住み替えたい」と考える人も増えるかもしれない。

また、前述のように、高齢化や核家族化が進んだことで、親が生活していた家の片付けや遺品整理が物理的にできないという人も増えていくことだろう。現在、全国に800万戸超の空き家があるといわれているが、そのなかには片付けができないため、売るに売れないという家もあるという。このホームステージングの普及が、空き家問題解決の糸口になるかもしれない。

なお、「ホームステージング」の費用だが、片付けや掃除、家具のレンタルなど、建物の種別や広さによって価格は異なってくるという。気になる人はまず、日本ホームステージング協会に問い合わせてみてはどうだろうか。

日本ホームステージング協会WEBサイト


株式会社回遊舎

"金融"を専門とする編集・制作プロダクション。お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで一手に引き受ける。マネー誌以外にも、育児雑誌や女性誌健康関連記事などのライフスタイル分野も幅広く手掛ける。近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」「J-REIT金メダル投資術」(株式会社秀和システム 著者酒井富士子)、「NISA120%活用術」(日本経済出版社)、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点10」(株式会社ダイヤモンド社)、「子育てで破産しないためのお金の本」(株式会社廣済堂出版)など。