のべ一万人以上の女性の生き方相談に乗ってきた、女社長の川崎貴子さん。「女のプロ」との異名をとり、著書『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる』(ベストセラーズ)などで説く恋愛・結婚の心得も話題を呼んでいます。「男たちにも言いたいことは山ほどある」と言う川崎さんが、恋愛や結婚で路頭に迷うアラサー男性の相談に愛を込めて答えていきます。

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Q.「結婚に魅力を感じません。周囲の既婚者を見ても、幸せそうな人がいないし、離婚をしている人も多い。離婚をしていなくても、奥さんの文句を言っている先輩ばかりです。男側がATMになるイメージもありますし、男にとっての結婚のメリットってなんですか?」(29歳・商社)

既婚者の話す奥さんの文句は話半分に聞け

奥さんの文句を言ってる人の話なんて、話半分に聞かないとダメだよ、とまず言いたい。なんだかんだ言ってどの家庭でもいい事も悪い事もありますよ。そして、男の人は大抵照れもあるのでいい事はのろけませんし、息抜きの意味で外では文句を言うこともあります。でも、そんな男の人でも、妻へのLINEではハートマーク使ってたりするものなんですよ。

本当にもめている夫婦もたくさん知っていますが、そういう夫婦は文句を言うんじゃなくて、無関心になるんです。存在が一切気にならなくて悪口すら言わない。愛の反対は無関心、と言いますが、まさにそれです。

「奥さん、最近どうなんですか」と聞かれても、「んー、知らない、普通にいつも通り」とかふわっとしたことを言ってくる。こういう家庭は赤信号です。奥さんや旦那さんの文句を言っているほうが、まだ男と女として成立していて、ちゃんとコミュニケーションしている証拠なんですよね。

結婚している人の強さ

さて、結婚メリット・デメリット、というテーマは最近世間でよく語られていることです。「結婚はコスパが悪い」なんて言葉も最近よく言われています。男性は特に、妻子を養う側に回る確率が高いので、よりそのような心配をするのでしょう。

我が家は結婚して6年間、私が経済担当で夫が家事育児担当でした。夫は8つ年下のダンサーで、私より家庭的だったのと、長女がいまだ小さかったのでそのような分業を致しました。最初の頃はほぼ事実婚状態で、「いつちゃんと結婚してくれるの?」なんて夫から言われたくらい。

一家の経済と責任を背負っていた者の立場で言わせてもらうと、「結婚はコスパで測れない」としか言いようがありません。生きているといろんなことがあるわけです。会社が倒産するかもしれない、友人が亡くなるかもしれない、大病するかもしれない、エネルギーを注いだ仕事があっても努力が報われないかもしれない。そんな時、家族の存在がどれだけ私のモチベーションになったか。

命がけで守れるものを持っている人間は、強いですよ。自分一人を食べさせていくモチベーションの比じゃないです。大変なことがあっても、こんなところでつまずけない、というものがあればありとあらゆるストッパーになります。逆に、自分の仕事の成功も自己満足にとどまらず、家族全員の喜びにつながる訳です。

頭で損得だけを計算したら結婚はデメリットのほうが多いです

実際、損得だけで考えたら、デメリットと感じる事はあると思いますよ。結婚することで自由がなくなる、時間も減る。けれど、不自由になった分、時間の使い方がうまくなる部分も間違いなくあって、タイムマネジメント能力は確実に向上しました。

特に子供ができてからは、その仕事が自分に必要か必要じゃないか、を、それまでは何も考えずにあれもこれも全部やろうとしていたことに、気付かされました。限られた時間の中で、自分が譲れない部分だけにエッジを立てていけばいい。絞っていかざるを得なくなったことで、自分のやるべきことが見えてきたわけです。家庭を持つことで、本当に自分に必要な仕事やスキルが分かる、これはメリットの一つなんじゃないかな。

数値化できるものの価値観では、自分の給料を全部使えて、自由な時間があって、会いたいときに彼女と会って、という「独身状態」のほうがメリットは多いと思いますよ。でも、数値化できない部分、「自分を信じて労わってくれる配偶者の存在」や「子供の笑い声や寝顔に癒やされる」とか、独身時代には予想もできなかった幸せが結婚にはあります。まるで人生のご褒美。愛する者を背負ったり背負われたり、共に暮らすって、メリットデメリットの概念がなくなるぐらい、思うよりずっと良いものですよ。

川崎貴子(かわさき・たかこ)
人材コンサルティング会社 ジョヤンテ代表取締役。女性誌での連載、執筆多数。主に恋愛論を書いているブログ「酒と泪と女と女」が話題となり、『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる』(ベストセラーズ)として2015年3月に書籍化された。20代のときにベンチャー経営者同士で結婚するも離婚し、2008年に8歳年下のダンサーと再婚した。2人の娘がいる。自身の離婚、再婚、子育て経験を通した説得力のあるアドバイスに、ファンも多い。