音楽家の坂本龍一が今月14日、東京オペラシティ・コンサートホールで山田洋次監督作『母と暮せば』(12月12日公開)のレコーディングを行い、25日、その模様が公開された。
昨年、中咽頭がんのため治療に専念することを報告した坂本。今年8月、山田監督と初タッグとなる『母と暮せば』の音楽担当で仕事復帰することを発表し、ファンを喜ばせた。今回のレコーディングには東京フィルハーモニー交響楽団が参加。会場には山田監督も訪れた。
坂本はオーケストラに向けて「よろしくお願いします。長い一日になると思います。みなさんと一緒にやるのは1年と4か月ぶりです」とあいさつし、「この音楽を頼まれたのがちょうどツアー中でした」と回顧。「今の日本で、山田洋次さんと吉永小百合さんに何かを頼まれて断れる勇気のある人はいないと思います(笑)。もちろん断るつもりはなかったですけど。ご一緒できて光栄です」と心境を語った。
一方の山田監督は本作を「お母さんが長崎の原爆で生き残って、息子は原爆で死んでしまい、亡霊になってお母さんのところに現れるという物語です」と説明し、「もう撮影は終わりましたが、この映画の音楽はどうしても坂本龍一さんにお願いしたかった。吉永小百合さんと相談して、坂本さんにお願いして、こうして今日この日を迎えられたわけです」と経緯に触れた。「長崎、広島の原爆の犠牲者を含めて戦争の犠牲者への鎮魂の思いをこめて、そんな気持ちでどうぞみなさん演奏なさってください。どうぞよろしくお願いいたします」と呼びかけた。
本作は、戦後間もない長崎を舞台に描かれるファンタジー。3年前に原爆で亡くなったはずの息子が突然現れるという物語で、楽しかった思い出話や残していった恋人の話をして過ごす2人の日々が描かれる。母・伸子役を吉永小百合、息子・浩二役を二宮和也、浩二の恋人・町子役を黒木華が演じる。
(C)2015「母と暮せば」製作委員会