かしこまったイメージがあり、若いときにはなかなか縁がない高級フランス料理。しかし社会人ともなれば、接待や結婚式などで利用することが増え、避けては通れない存在でもある。また、男性なら「記念日デートで彼女をエスコートしてみたい」とも考える人もいるだろう。そんな時に慌てずスマートに対応できるよう、フランス料理のマナーを学んでおこう。

教えていただく方

ウェスティンホテル東京 料飲部長 石黒 憲さん

都内ホテルで経験を積み、ウェスティンホテル東京に2014年入社。料飲部長としてホテル内の全レストランとバンケットを統括・指導している。「一緒に食事をしている人に不快感を与えず、かつ楽しく食べることが一番大事なマナー。『絶対にこう! 」というものはなく、ただ「上手に食べるにはこういう方法がありますよ」というのがマナーだと思います」とのこと。

今回、講師役をお願いしたのは、東京・恵比寿「ウェスティンホテル東京」の料飲部長・石黒憲さん。同ホテル内の全レストランやバンケットを統括・指導している偉い方なのだが、サービス大好きで、いまでも積極的に現場に出ているそう。

それでは、同ホテル内のフレンチレストラン「ビクターズ」で実際に提供されているコースを頂きながら、気になるマナーのポイントを紹介していこう。

ディナーコース「ビクダーズ」1万2,000円(税・サービス料込)

※写真は9月末まで提供の夏バージョンの料理内容

「ホタテのマリネ サラダ仕立て」

「フィッシュ&チップス ブロッコリーソース」

「冬瓜入りビーツの冷たいスープ セロリ風味のクリームを浮かべて」

「白身魚の蒸し焼き フヌイユの香り 甲殻類のソース」

「鴨のロースト ハニーレモンソース」

「野菜のパルフェ」

「野菜のマドレーヌ」

ワイン選びもテイスティングも潔くソムリエに頼ろう

最初にして最大の難関!? のワイン選び

レストランに入り、案内され着席。この直後に、最大の難関とも言えるワイン選びが待ち構えている。ワインに詳しい人なら楽しい時間だろうが、そうでなければ憂鬱になる人もいることだろう。すると石黒さんから、「分からない時はどんどん聞いてください。そのためにソムリエがいるんですから」と心強いコメントが。「ワインリストを見てもよくわからない、でも予算は1万円まで! 」といった場合は、素直にソムリエに予算を伝えたほうがいいとのことだ。

しかしデートならその方法はちょっぴり微妙。もちろん接待の場ではNGだ。その場合は、「ワインリストをうまく活用してください」とのこと。例えば1万円程度の赤ワインがほしいと思った場合、ワインリストでその前後の料金のワインを指さしながら、「赤でこれぐらいのものを」と伝えればOK。接待ほどかしこまった場ではない場合、「『お料理と同じくらいでお願いします』というのも手ですね」。

ワインリストを活用し、指差しで「このぐらい」と予算を伝えるのもスマート

もし予算を伝えずに「赤でフルボディのタイプを」を伝えてしまった場合。会計まで「一体いくらのワインなんだ……」と震えながら待つことになるのだろうか。石黒さん曰く、「そのような場合は、高価すぎるものではなく、ミドルレンジのものをおすすめします」。店にもよるだろうが、「ビクターズ」の場合は会計時に青ざめてしまうような料金のワインを抜栓されることはないのでご安心を。

そしてワインが決まると、テイスティング。テーブル上にセットされたグラスに少量のワインを注がれ、テイスティングを促される。これもワイン通でなければ緊張の瞬間だ。「テイスティングでは、味、香り、異物が入っていないかを確かめます。でも飲みなれていない人は実際分からないと思います。自信がない場合は、『あまりワイン詳しくないので、お願いしてもいいですか』とソムリエに任せてしまったほうがスマートですね。ソムリエはプロですので」。

また、人によってはワイン以外のアルコールが飲みたいこともあるだろう。例えばビールやハイボールの注文は可能なのだろうか。「ビールはメニューに載っています。ハイボールは載っていませんが、ホテル内にはバーがありますので、メニューにないものでもそこからお持ちすることができます。メニューになくてもまずは聞いてみてください」とのこと。ホテル内のフレンチレストランということで一層緊張度が増す人もいるだろうが、実は思っていた以上に自由度が高く、使い勝手がよさそうだ。

ちなみにアルコールが苦手な場合、「お水にしてください」とお願いしてしまってもよいのでしょうか。「もちろんOKです」とにこやかに石黒さんは答えてくれた。また、その際の水は頼んでもいないのに有料の水になることはあるのだろうか。「黙って有料のお水を持ってくることはありません。『ミネラルウォーターのご用意もありますがどういたしますか』という風にお聞きするのが通常かと思います」。普通の店であれば、間違っても「無料の水でいいですか」とこちらが恥ずかしくなるような聞かれ方はしないのでご安心を。 続く後編では、いよいよコース料理がスタート。フォークで刺しにくい葉もの野菜が入ったサラダや骨のある魚料理など、「???」がいっぱい頭に浮かんでしまいそうな料理の食べ方を石黒さんが優しく、詳しく解説。お楽しみに!!

ウェスティンホテル東京 フレンチレストラン「ビクターズ」

落ち着いた上質な雰囲気の中で楽しめる、厳選した食材の個性をいかした創造性豊かな料理が特徴的。今年春からは野菜を中心としたこだわりのフレンチ"野菜フレンチ"をスタート。シンプルな調理法で野菜のおいしさを最大限に引き出したコースが評判に。窓の外には東京タワーからお台場レインボーブリッジまで見渡せるという抜群のロケーション。

撮影: キミヒロ