古今東西、チョコレートは味だけでなく形にもこだわった逸品が多いが、箱を開けるやギョッとしてしまうデザインのものはそうそうない。だけど、群馬生まれの「かいこの王国シリーズ」は、誰もが手に取ることさえちゅうちょしてしまうこと必至。なんせ、つぶらな瞳のかいこがじっとこちらを見据えているのだから。
第1~3まで実にリアル
「かいこの王国シリーズ」は、現在のところ第3弾まで発売されている。「お蚕様(おこさま)チョコレート」(3個入り/820円、6個入り/1,560円)の商品名を持つ第1弾は、桑の葉に乗った"お蚕様"がなんともリアルで、頭からだろうとお尻からだろうと口にするのがはばかられて仕方がない。
そして第2弾の「かいこの一生チョコレート」(3個入り/980円)に至っては、成虫となった蚕まで同梱(どうこん)。かと思えば第3弾の「まゆこの夢チョコレート」(2個×3袋入り/720円)は、打って変わってドリーミーな雰囲気が醸し出されている。
世界遺産決定前に走り始めたご当地土産
3商品全てを並べるとなんともいえない妙な心もちになるが、実はこんな奇抜なチョコレートが生まれたのにはれっきとした理由があったのである。そのヒントとなるのが、商品を製造・販売している丸エイ食品の所在地が群馬県だということだ。
群馬県といえば、「富岡製糸場と絹産業遺産群」が世界遺産に正式登録されたことが記憶に新しい。そのおめでたいニュースが日本中をにぎわしたのは2014年のことだが、2007年には近代化遺産として日本で最初に暫定リストに含まれたこともあり、地元では早い段階から世界遺産化を応援するムードが高まっていたんだとか。
同社もそうした時流に乗り、「世界遺産登録の追い風になれば」という思いから、話題性のあるお土産で群馬をPRしようと考えたのだとか。そこで、第1弾となる「お蚕様チョコレート」の試作を開始したのが2012年。約1年の開発期間を経て、2013年1月に販売を開始している。
「気持ち悪い」がほめ言葉のよう
それにしても、はっきりいってこの見た目はかなり強烈。実物を見た客の反応が気になるところだ。素直にその気持ちをぶつけたところ、同社企画開発部の向井さんは「ディスプレイを見たお客様は、『気持ち悪い』『うわ~』『無理無理……』などと口々におっしゃられますが、どなたも写真を撮られるなど表情はとっても楽しそうなんです。驚いていただけるようにリアルに作りこんだところもあるので、最近では『気持ち悪い』という言葉がほめ言葉のように聞こえます」とあっけらかん。
さらに「『かいこの一生』に関しては『よく作ったね』『おもしろい発想』と感心してくださるお客様が多いです。虫が苦手な方は『まゆこの夢』に虫の姿がないのを確認してほっとした様子で購入されていきます」となんともウィットにとんだコメントも。
グミ案が却下された理由は……
とはいえ、完成までは試行錯誤の連続だった。まず、万人受けを考えてかわいいデザインにした方がいいのではという葛藤もあった。しかし、「インパクトがないと話題にならない」とあえてリアルを選択。さらに触感も近づけようとグミで試作したが、「さすがにリアル過ぎてチョコにしました」と明かしてくれた。
原材料にもこだわりがある。蚕型チョコとセットの桑の葉チョコは、本物の桑の葉のみで着色。原料のチョコにはこだわりのクーベルチュールをブレンドしている。まゆ型チョコには食感の異なる2種類のパフを配合し、軽やかなおいしさを演出。成虫型チョコは香ばしいサクサク感を楽しめるのがうれしい。
また、「かいこの王国シリーズ」が第3弾まで販売となった現在では、シリーズの完結を記念して「お蚕様ストラップ」(650円)も販売している。さらに、養蚕のエピソードを漫画で配信するという新たなプロジェクトも展開。月に1~2回のペースで、メルマガで新作を配信しているのだとか。
「これからもさらにおもしろいものを開発して、群馬から日本を元気にしていきたいですね」と意気込む丸エイ食品の今後に、ますます期待できること間違いなしだ。
※記事中の情報・価格は2015年9月取材時のもの。価格は税込