ライターとして仕事をしていると、日々さまざまなプロダクトに接することになる。そうなるとどうしても慣れてしまい、技術の進歩を感じることはあっても、心の底から驚くモノに出会うことはだんだん少なくなっていく。
そんな中、久々に「これはすごい!」と驚いた製品が登場した。手書きした文字をボタンひとつでデータ化し、スマートフォンやタブレットに送信できるデジアナ文具「Bamboo Spark」である。デジアナとは「デジタル」と「アナログ」を融合させた言葉だ。
「Bamboo Spark」の何がそんなにすごいのか。まずは基本的な機能を紹介しよう。
バインダーをゴムで留めるところはまさに文房具というルックス |
今回レンタルしたのは3機種ある中の「Bamboo Spark, with tablet sleeve」。9.7インチまでのタブレットが入る伸縮性タブレットスリーブつきモデルだ |
手で書いた内容をデータにして送信
「Bamboo Spark」でできることはシンプル。紙の上に書いた文字や図をリアルタイムにデジタル化して、ボタンひとつでスマートフォンやタブレットに送信が可能だ。紙に書いた方はそのまま残り(普通に紙にペンで書いているのだから当然ではある)、一方でデジタル化したデータは編集・共有などが行えるというものだ。
まるで魔法のようだが、もちろんタネはある。実はこの「Bamboo Spark」は、紙を置く側、つまり右側にデジタイザーと呼ばれる装置が入っており、専用のペンを用いて書いた文字や図をすべて認識するのである。
しかも、このデジタイザーは、紙をのせてその上からペンで文字を書いても問題なく動作する。イメージとしては、書類の間にカーボン紙を挟んで複写する仕組みを思い浮かべるとわかりやすい。筆圧がカーボン紙に伝わり、下に敷いた紙にカーボン紙のインクが裏写りするわけだが、「Bamboo Spark」ではデジタイザーがこのカーボン紙の役割を果たしているといえる。
「Bamboo Spark」の精度は高く、間に紙を約50枚(5mm前後)ほど挟んでも問題なく使える。このため、読み取り範囲サイズ内(148mmx210mm)であることさえ留意すれば、市販の適当なノートが使えるのはありがたい。専用のノートが必要ということになると、使い続けるハードルが上がってしまうからだ。
ちなみにペンの方はデジタイザーにしっかりと筆圧を伝えるため、専用の「スマートペン」となっており、同時に一般的なボールペンとしても使える。ボールペンとして紙に書いた方がそのまま残り、同じ筆圧をデジタイザーでデジタル化するため、紙に書いたものがそのまま取り込まれたように見えるのだ。見事な「マジック」である。
"手書きデータ"はクラウドで管理
なお、スマートフォンやタブレットに送信されたデジタルデータは、アプリ「Bamboo Spark app」やノートアプリ「Bamboo Paper」などで閲覧・編集することができる。同社が無料で提供するクラウドサービス「Wacom Cloud」にアカウントを登録すれば、一度取り込んでデジタルデータにはどの端末からでもアクセスすることが可能だ。
アプリの編集機能で面白いのは「分割」で、これは書いた流れを逆に巻き戻して、好きなところで分割保存することができるというもの。例えばプレゼンなどで図を書いて説明する場合、途中の段階を保存しておきたいと思うこともあるだろう。手書きした紙をスマートフォンのカメラで撮影すればデジタル化は可能だが、すべて終わった後で途中の段階まで巻き戻すことはできない。しかし、「Bamboo Spark」ならどの段階まででも好きなだけ戻せるので、込み入った打ち合わせやプレゼンなどにも威力を発揮してくれそうだ。
他にライターである筆者ならではの活用法としてパッと思い浮かぶのは、取材やインタビュー中のメモに使うやり方だ。筆者は取材で一言一句書き留める際にはノートPCを使うが、立ったまま取材する場合や、ノートPCを使いづらい取材・インタビュー(たまにあるのだ)では、あえて手帳を使うこともある。
そうした場合に「Bamboo Spark」を使えば、書いたものが即座にアップされるので、いちいち後からスマートフォンで写真を撮って……とやる必要がない。また、外出先で社員が書いた内容を最速で共有することができる。逆もまたしかりだ。
スマートフォンやタブレットで情報共有自体はやりやすくなった昨今だが、イラストや図など手書きの方がやりやすい作業はまだまだ多いし、その場合にスマートフォンとスタイラスではなく、紙とペンが適している場面も多い。「Bamboo Spark」はそうしたデジタルとアナログのギャップを埋めてくれる画期的なプロダクトになるかもしれない。
次回は、実際に「Bamboo Spark」を使ってみる。