早朝から人々が声を掛け合い、せりを行う卸売市場。東京都内には実に11もの市場があるという。今回はその内でも特に訪れたい3カ所を紹介しよう。
マグロのせり現場に突入!
卸売市場の代名詞ともなっている「築地市場」(中央区)。日本の活気ある卸売り現場を体感できるとあって、海外からの旅行者にも人気の的となっている市場だ。見学のパンフレットは英語だけでなく、中国語、韓国語、そしてロシア語まであるということからもその注目ぶりがうかがえる。
まずは築地市場の中でも「築地市場マグロ卸売場」を訪れたい。ここでは、早朝に行われるせりの様子を見学できる。 予約の必要はなく、先着順で120人までの入場が可能。「おさかな普及センター」という、何ともかわいらしい響きの受付で申し込みを行う。
許可証代わりのベストをもらったら、着用して会場へ。写真撮影はできるがフラッシュは厳禁のため注意したい。ちなみに受付は5:00からとなっているが、定員に達してしまったら5:00前でも締め切ってしまうとのこと。がんばって早起きしよう。
せっかく新鮮な食材が集まる市場にいるのだから食べずに帰るのはもったいない。場内にある「魚がし横丁」には必ず立ち寄ろう。築地市場では水産物だけでなく青果物も多く取引されているため、ここには実に様々なお食事処がそろっているのだ。そのほか、プロ仕様の調理器具や船用品を扱っている店も多数ある。食後の散策も楽しめるだろう。ガラスの浮き玉や船の舵はインテリアとしてもオススメだそうだ。
やっと空が明るくなってきたころだというのに人々がせわしなく動き回り、大きなマグロを前に声を掛け合う様子は非日常的。東京にいながら異文化を体験するような気分になるだろう。築地市場は2016年11月に「豊洲新市場」への移転を予定している。80年近くの歴史がある築地市場を今のうちに見ておいてはいかがだろうか。アクセスは都営大江戸線「築地市場駅」下車すぐとなっている。
見学コース完備! ゆっくりめぐれる市場
卸売市場は生鮮品を買い付ける業者の集まる"プロの仕事場"。そのため見学者は彼らの邪魔にならないように気を遣う必要があるものだ。そのライブ感が市場の醍醐味ではあるが、もう少しゆっくり見てみたい、という人には「大田市場」(大田区)をオススメしたい。
ここには「見学コース」が完備されているため、自分のペースで見て回ることができる。大田市場で扱われているのは水産物、青果物、そして花。青果と花では日本一の規模を誇るという。
まずは警備員の詰め所に立ち寄り、パンフレットを入手。あとは自由見学となるがコースの看板がところどころにあるため迷うことはないだろう。コースは2階ほどの高さにあり、上から市場全体を眺めることができる。ここでしか見られない壮観な光景だ。
見学できる時間は5:00から15:00まで。それぞれに早朝からせりが行われているため、やはり早い時間に訪れた方がいいだろう。場内には築地市場と同様、お食事処がある。せりを見た後に食べる市場の朝ごはんはまた格別だ。
大田市場へのアクセスはJR線「大森駅」や京浜急行「平和島駅」からバスを利用しよう。また、この市場の隣には東京港野鳥公園があり、東京らしからぬ自然の中でのバードウォッチングが楽しめる。たくさんある観察小屋には望遠鏡も設置してあるため、手ぶらで本格的な観察ができるのがうれしい。朝の市場見学の後、足を伸ばしてみてはいかがだろうか。
肉好きにはたまらない!
「食肉市場」(港区)は、東京に11カ所あるという中央卸売市場で唯一の肉市場。通常の見学は受け付けていないが、毎年10月に"お肉の祭典"として特別に開放される。
東京都中央卸売市場で唯一の肉の市場「食肉市場」では毎年10月に"お肉の祭典"を開催 (c)Flickr/Satomi Abe |
しかも、無料試食が多数あるという大奮発ぶり。2015年は「総称山形牛」のしゃぶしゃぶや、モツ煮込み、とんかつ、焼き肉の試食が用意されるとのこと。そのほかにも有料の屋台や、肉・野菜・革製品の販売ブースも登場するという。食三昧を楽しめそうだ。開催は10月24日~25日の10:00~16:00(25日は~15:00)。試食は数量が限られるため、早めに行った方が良さそうだ。
また、イベントが開催されていない日でも「お肉の情報館」への入場は可能。肉の格付けについての説明や、実際に触れる事のできる牛の毛皮、実物大の牛・豚の内臓レプリカなども展示している。アクセスは各線「品川駅」より徒歩5分。東京の主要駅にお肉の市場があるところが面白い。
意外と身近にある、東京の卸売市場。たまには少し早起きをして市場の活気を肌に感じ、新鮮な食材を食べて始まる一日、なんてものはいかがだろうか。また、市場は現場の人々にとっての仕事の場でもある。邪魔をしないよう、マナーを守って見学しよう。
筆者プロフィール: 木口 マリ
執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。旅に出る度になぜかいろいろな国の友人が増え、街を歩けばお年寄りが寄ってくる体質を持つ。現在は旅・街・いきものを中心として活動。自身のがん治療体験を時にマジメに、時にユーモラスに綴ったブログ「ハッピーな療養生活のススメ」も絶賛公開中。