会社勤めの人の場合、9月は人事異動が行われることの多い季節。家族を残して単身赴任をすることになる方もいるでしょう。そこで素朴な疑問として浮かぶのが、住民票を移動させる必要はあるの? ということ。手続きが面倒だったり、引っ越しの忙しさで手続きを忘れていたりすると、どんなデメリットがあるのでしょうか?
今回は、東京都の杉並区役所と、「あおい綜合法務事務所」代表・萩原さんに質問をしてみました。
Q.そもそも、単身赴任をすることになった場合、住民票を移すことは義務なのでしょうか?
A.「住基法には、生活の本拠地に住民票を置くこと、と定められています。そのため、住所が移れば、原則的には住民票も移すことが必要です。ですが、赴任が1年以内など短期で、将来的に元の家に戻ることが決まっている場合は移さなくてもよいとされています。また赴任期限が決まっていない場合でも、毎週末は家族の住む家に戻るなど、生活の基盤が元の家にある場合も同様です」(「あおい綜合法務事務所」代表・萩原さん)
Q.「住民票を移すのを忘れていた」という場合、何かデメリットはあるのでしょうか?A.「自治体により異なるのですが、住所を移してから数か月~半年など、一定期間を超えてから住民票を移すと、役所から裁判所に報告されることもあります。過去にさかのぼって住民票を移すと、5万円以下の罰金など、罰則が科される可能性もありますので気を付けましょう」(「あおい綜合法務事務所」代表・萩原さん)
住民票を移す必要があるのに長期間移さない場合は、悪質と判断されて罰則が科せられる場合もあるということですから、引っ越しに伴う各種手続きは確実に済ませるように心掛けることが重要です。
Q.単身赴任をする人が住民票を移した場合の、住民税や児童手当はどうなりますか?A.「住民税は移動先ではなく、1月1日現在の住所地で課税されますので、1月2日以降に転出された場合でも、元の所在地の市区町村に納めることになります。児童手当は、世帯主の移動先、住民票のある市区町村から受給することになります」(杉並区役所)
Q.選挙権はどうなるのでしょうか?A.「選挙の種類によって異なります。単身赴任先市区町村での選挙人名簿への登録は、転入届け出の日から3か月以上、登録の基準日まで在住することが必要です。ただし移動前の市町村の選挙人名簿は、転出してから4か月間は登載されますので、4か月間は移動前の住所での選挙権があります。単身赴任により住所異動を行う際は、速やかな住民移動の届け出を行いましょう」(杉並区役所)
そのほか、「パスポートの作成や運転免許証の更新は、基本的に住民票の所在地にて行う」(「あおい綜合法務事務所」代表・萩原さん)とのこと。
住民票は移すのが基本ですが、各家庭の事情や赴任期間によっては、移動させないという選択肢もあるようです。ただし、住民票の移動のうっかり忘れには、十分注意してくださいね。
<取材協力>
●杉並区役所 http://www.city.suginami.tokyo.jp/
●萩原徳仁氏 http://www.naruhito.info/
社会保険労務士・行政書士。あおい綜合法務事務所代表。会社設立、営業許認可、人事労務など企業法務に関する専門家。
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