大阪ではいま、欧風カレーやスパイスカレー、さらには和風カレーなど、個性あるカレーが競い合っている。そんな中、カレー通の間でひと際注目を集めているのが、昼間は営業していないBarや居酒屋などを間借りして営業する、通称「宿カリー」だ。特に最近は人気店にこのスタイルが増えたため、大阪のカレー通の間ではひとつのジャンルとして確立しつつある。そこで今回は気鋭の「宿カリー」を3つ紹介しよう。
南印やスリランカの伝統の合いがけ
大阪市営地下鉄「南森町」駅から徒歩3分ほどの場所にある「梵平」は、ゲストハウスの食堂を昼間だけ借りて営業する「宿カリー」だ。提供するスパイスカレーは、キーマカレーと日替わりカレーを合いがけにした「梵平ミックスカレー」(900円)の一種類のみで、一日30食限定となっている。
スパイスカレーはもともと、南インド地方やスリランカなどで食されているもので、現地では2種類以上の合いがけカレーを混ぜながら食べるのが一般的。「梵平」のカレーは辛さ控えめだが、混ぜることで独特の旨みやクセになる味わいが生まれるのが特徴だ。
10種類以上のスパイスを用いたキーマカレーは、肉々しさの中から甘みや辛みがジワッと広がる。一方、この日はビターポークカレーだった日替わりカレーは、旬を大切にするオーナーが自ら市場で仕入れた素材によって決まり、辛さや味わいもさまざま。オーナーいわく、「毎日が実験的なチャレンジ」と語るほど、野菜やチキン、ポークカレーなど、多種多様なカレーが登場し、混ぜた時の味わいも変化する。
ドラゴンエッグがカレーを引き立てる
付け合わせにもこだわりが満載だ。大根にクミンを絡めたライタや、角切りのトマトやキュウリをチャットマサラで和えたカチュンバルと呼ばれる付け合わせが添えられている。どちらもさっぱりした酸味があり、辛さに満ちた口の中をクールダウンしてくれる。さらに、台湾料理をヒントにスパイスや醤油で煮込んだオリジナル煮玉子・ドラゴンエッグも、付け合わせとしてカレーを引き立てる。
「時には、インドのキーマカレーに日替わりでタイのグリーンカレーを合わせる日もあります。これがかなりおいしくて。異なる国のカレーを混ぜて食べてもおいしいのは、カレーという食べものの懐が深いから。作り手が存分に個性を表現できるのが、カレーの素晴らしさだと思います」というオーナーのひと言に、カレーの奥深さを感じた。