アユートは9月15日、beyerdynamicとAstell&Kernによるコラボイヤホン「AK T8iE」の製品発表会を行った。本稿では、発表会の内容とAK T8iEの試聴レポートをお届けする。
AK T8iEは、2015年8月にグローバル発表された密閉型イヤホン。9月にドイツ・ベルリンで開催された家電見本市「IFA2015」にも出品しており、試聴の機会を設けていた。AK T8iEは、これまでヘッドホンにのみ用いられていた設計技術「テスラテクノロジー」を、世界で初めてイヤホンに採用したことで話題を集めている。
AK T8iEの周波数特性は8~48,000Hzで、インピーダンスは16Ω。出力音圧レベルは109mWとなっている。国内発売は10月中旬。価格はオープンで、推定市場価格は150,000円前後。
ハイエンドサウンドに熱さをみせる両社
beyerdynamicとAstell&Kernはこれまで、ポータブルヘッドホンアンプ「AK10」(2013年)と、ヘッドホン「AKT5p」(2015年)を共同開発した。今回のAK T8iEで、3回目のコラボレーションとなる。妥協のないハイエンドサウンドを追求してきたという点で、共通のフィロソフィーを持つ両社。Astell&Kernブランドを展開するiriverのJames Lee氏は、「世界一のオーディオメーカー、beyerdynamicとコラボできることは非常に光栄だ」と、リスペクトを示していた。
「テスラテクノロジー」と「Made in Germany」
両社は、2013年の夏からAK T8iEの開発をスタート。AK T8iEの最たる特徴である「テスラテクノロジー」は、ドライバーに磁力の高いリング型マグネットを搭載することで、ドライブ効率と解像度を高める技術だ。元々はbeyerdynamic「T1」などのハイエンドヘッドホンに採用していた技術で、今回イヤホンに搭載するにあたり劇的な小型化をはかった。ドライバーには11mmと大型の振動板を搭載するが、その厚さも100分の1mmとかなり薄い。
また、生産を完全にドイツの工場で行っていることも特徴のひとつ。ドイツ工場ではAK T8iE用の製造機械を自社で製作。さらに、細かい作業はデジタルマイクロスコープを使って手作業で行っており、スイス時計を組み立てるかのような精密さで製造している。
ハウジングは数千ものイヤーシェイプデータをもとに設計。従業員の耳で何百回とテストを行い、最終的に製作された7つのプロトタイプからハウジングデザインを選んでいる。表面には銅やクロムなど3層のコーティングを施しており、傷つきにくくなっているほか、冬場に使用しても冷たさを感じないという。
ケーブルは着脱式で、端子にはMMCXを採用。ケーブルには細くて軽いケブラー素材と、タッチノイズを抑えるTPE(エストラマー)素材を使用している。ケーブルには40,000回、プラグ部分には100,000万回の屈曲テストを実施し、耐久性をテスト済みだ。
AK380とともに試聴
プレゼンテーションの後は試聴会を実施。筆者はAK T8iEをAstell&Kern「AK380」に直接つなぎ、オーケストラをバックにした合唱曲、女性ボーカルのポップス、男性ボーカルのロックを試聴した。再生ボタンを押した瞬間に驚かされたのは、その解像度と立体感だ。
ボーカルは、低音が体の深いところで鳴る一方で、高音は頭の上を抜けるように響く。さ行など口先で出す音も非常にリアリティを感じさせる。ボリュームをかなり上げても音が割れる気配がなく、ボーカルのシャウトも「音」というより「声」として鳴っていた。
パーカッションの音自体もやはり粒子が細かいが、ストレートに振動として体に響くため、演奏したその現場にいるかのような臨場感を味わえた。ピアノの音は一音一音が独立して鳴っているように感じたが、音にスピード感があるため、ボーカルと合わさったときの流れがスムーズだった。