じゃらん人気温泉地ランキング2015で「全国あこがれ温泉地ランキング」第1位、「もう一度行きたい温泉地」でも第2位になった由布院(大分県由布市)。とは言え、由布院の魅力は温泉だけではなく、今日ではJR九州の観光列車も旅の目的に選ばれている。そこで今回、話題の観光列車も含めて由布院の味わいをたっぷり紹介しよう。
訪日観光の"ゴールデンルート"に続く由布院
前述の通り、人気温泉地ランキングではかなり高い評価を得ているものの、実のところ由布院がある大分県由布市の観光客数は2006年460万人から2015年は396万人となり、近年減少傾向にある。その中で増加しているのが外国人客だ。2015年は日帰り客9万6,000人、宿泊客4万5,000人を合わせて14万2,000人。今JR由布院駅や金鱗湖(きんりんこ)へ向かう道はアジアからの外国人観光客であふれている。
いったん、全国のデータを見てみよう。2015年1-7月期訪日客数は1,105万人を突破し、7月単月の訪日客数は過去最高となる191万人となっている。この増加を下支えしているのが、FIT(個人の訪日外国人旅行)客の増加だ。全国1万8,000施設の情報を有し、外国語に対応したホームページである楽天トラベルはFIT客にも利用されているのだが、2015年5月の外国人旅行取扱額が前年同期比で73%増加している。
FIT客は訪日回数2回以上のリピーターが多く、定番スポットを外したエリアや泊まったことのない宿を探す傾向がある。実際、「外国人に人気の温泉地ランキング」では第1位に訪日外国人たちのゴールデンルートである富士山「河口湖温泉」、そして第2位に大分県由布市の「由布院温泉」が入っている。
JR九州自慢の列車が由布院駅に集結
そんな由布院では楽しみ方も変化している。かつてJR由布院駅から金鱗湖へ向かう中心街は人気観光エリアだったが、観光地化が進むにつれ、日本人の中にはそれを敬遠する人も出てきた。お土産物屋が立ち並ぶ通りや店先には今、韓国や中国などアジアからの観光客が押し寄せている。
そもそも由布院を訪れる人の半数は大分県内と福岡県からの客で、8割は九州圏を中心とする日帰りの客だ。一方、東京など都市部からの客はというと、喧騒を避けて自然あふれる山の中で上質な時間を提供してくれる温泉宿「山荘無量塔」など、由布院の中でもワンランク上の宿や観光施設を選ぶ傾向がある。
もうひとつの新たな由布院の楽しみ方が観光列車だ。由布院駅は豪華寝台列車「ななつ星in九州」の停車駅としても知られるが、博多駅~由布院駅・別府駅間を結ぶ人気観光列車「ゆふいんの森」も由布院駅に停車し、さらに、復路のみの停車(乗降不可)ではあるが、話題の「JRKYUSHU SWEET TRAIN『或る列車』」も由布院駅で見ることができる。
ゆふいんの森には7月より新車両が投入されており、或る列車は8月8日より大分駅~日田(ひた)駅を約2時間20分で走る大分コースの運行が始まった。この或る列車はななつ星に劣らない豪華列車で、ラグジュアリーな空間で豪華なスイーツコースを提供する観光列車だ。今、由布院に行けば、JR九州のこの3つの人気観光列車を間近で見ることができる。
近代化産業遺産の機関車庫・転車台の魅力
また7月には、軍艦島など「明治日本の産業革命遺産」が世界文化遺産に登録されたが、由布院駅から30分のところにある玖珠(くす)町の豊後森(ぶんごもり)駅には、2012年国の登録有形文化財となった近代化産業遺産「旧豊後森機関車庫・転車台」がある。まだ知る人は少ないが、そのロマンあふれる遺構は軍艦島に通じる魅力がある。そんな豊後森駅はゆふいんの森と或る列車の停車駅(或る列車は停車のみで乗降不可)ともなっており、由布院へ行く新たな目的&楽しみのひとつとなっているようだ。
今回は新車両が投入されたゆふいんの森で行く、豊後森へのショートトリップを紹介しよう。ゆふいんの森は博多駅~由布院駅・別府駅間を走る全席指定の観光特急列車で、新車両のデザインは豪華寝台列車ななつ星と同じ水戸岡鋭治氏だ。緑あふれる車窓と相まって、車内ではまるで森の中にいるような気分になってくる。なお、ななつ星や或る列車は運行が曜日で変わるため、事前に運行情報を確認していただきたい。