優秀な人材なら国籍を問わない、社内公用語は英語。そんな企業が少しずつ増える中で、日本で働く外国人の数も増加しています。「日本で働きたい」という夢を、社長への直談判でつかんだというベトナム人のリンさんもその一人。流暢な日本語を話しながらも「専門スキルも日本語も、もっと磨いて早く独り立ちしたい!」と、真摯に学ぶ姿勢を忘れません。やりがいのある仕事を持ち、アフターファイブはジムで汗を流して、週末は友人と旅行やショッピングを楽しむ、と日本人OL顔負けの充実した生活を送っている彼女に話を聞きました。

グエン・ティ・トゥイ・リンさん/ベトナム・タイ・グエン省出身、東京都内在住/株式会社オープンコート、SEOコンサルティンググループ勤務

■これまでのキャリアと今の仕事について教えてください

ハノイの北に位置するタイ・グエン省で育ち、ハノイ外国語大学(現ハノイ大学)に進学しました。憧れだった大学に合格できたものの、何語を専攻するか迷っていた時に、日本で5年間働いていた従姉妹がベトナムに戻って来たんです。彼女の話を聞くうちにどんどん日本への興味が湧き、日本語を学ぼうと決めました。

卒業後は、ベトナムのIT会社に就職しました。日本企業とのEコマースシステム再構築プロジェクトなどを担当し、やりがいも感じていましたが、翻訳中心で日本語を話す機会が少なかったことから、転職を考えるように。

2年半後、知人の紹介で日本人向け週刊情報誌「Vetter」の通訳兼営業の仕事につきました。ハノイ市内のレストランやスパなどを中心に広告掲載のお願いをすることで営業のスキルも身に付きましたし、社内での会話・メールは基本的に日本語だったので日本語力もアップしたと思います。何より日本人と一緒に働くことで日本流の仕事の進め方が分かったことが一番良い経験になりました。

給与面などでも不満はなかったのですが、日本語検定の勉強も続ける中で「日本で働いてみたい」という思いが強くなり、3カ月の日本研修が確約されていた「オープンコート」のオフショア業務を受託する現地企業に転職しました。昨年3カ月の日本研修を終えハノイに戻りましたが、日本で専門的な業務を見聞きした後では、ベトナムでの仕事に物足りなさを感じてしまうように。もう1度、今度は長く日本で働きたいと社長に直談判した結果、2年間「オープンコート」の東京オフィスで勤務できることになりました。現在は都内のオフィスで日本人の社員と同じ待遇で働かせてもらっているので、大変ですが毎日非常に充実しています。

■現在のお給料はどうですか?

ベトナムでは日系企業に勤務していても基本的には現地水準のお給料となり、現在は日本人と同じようなお給料を頂いています。東京の物価は高いですが、ベトナム人の友人とアパートをシェアするなどの工夫もしているので生活にも全く困らないし、不満はないです。

■日本人のイメージは? あるいは理解しがたいところなどありますか?

最初の日本人の印象は「働きすぎる」と「丁寧すぎる」でした。でも「働きすぎる」については、日系企業で日本人と一緒に働くうちに、その状況に染まっている自分がいました。他の人が頑張って仕事をしているから、自然と自分も頑張らなきゃと考えるようになったんだと思います。

「丁寧すぎる」は今でも感じるところがあって。例えばエレベーターの乗り降りの時に全然知らない人同士でも「すみません」という風に頭を少し下げるのは、外国人からすると面白くて時々笑ってしまいそうになります。同じようにエレベーターを降りる際に、乗っている人に気を遣って「閉まる」ボタンを押してから出ることにも驚きました。ベトナムと違い、日本ではすごく周りに気を遣っているんだなぁと感じます。

理解し難いことは、人気のラーメン店などに何時間も並べること。赤信号の時間を待つことさえイライラしてしまうベトナム人からすると、驚きを通り越して感心してしまいます。

「日本の着物が大好きです」とリンさん

■最近TVやラジオ、新聞などで見た・聞いた日本のニュースは何ですか?

大阪の女子中学生殺害事件です。そのほかにも、日本に来てから女性が殺害されたという事件を何度か聞いて、治安の良い日本に居ても女性1人では気を抜いてはいけないなと感じています。ベトナムでも、もちろん凶悪な事件もありますが、どちらかと言うと殺人などよりもお金目的の強盗などが多いと感じます。