家族みんなで猫を可愛がっていても、猫は一番お母さんに懐くことが多いのではないでしょうか。どうも猫が近寄ってこなかったり、寝るときはいつもお母さんの部屋だったり、「猫に対する愛情では負けてないのになぁ」と嘆くお父さんも多いと思います。
猫というのは不思議なもので、はっきりと男性好きと、女性好きが存在します。生まれつきの相性なのか、いままでの生活環境が影響しているのかわかりません。どちらかというと女性が好きな猫が多いと感じるのは、獣医師の共通認識でしょう。動物病院でも女性獣医師を希望する猫が多く、男性獣医師としては寂しい思いをすることも多々あります。猫がお母さんを好む理由を考えてみまししょう。
高い声の方が好み
猫の耳は、人間よりも高い音を聞き取るように適応しています。音の音程を示す単位にHz(ヘルツ)がありますが、人間が聞き取れる範囲が20Hz~2万Hzなのに対して、猫は45Hz~6万5千Hzと、人間の3倍以上です。これはネズミなどの小動物の声を聞き取るために進化したためと考えられています。
猫は意外と視力が弱く、周囲の状況を把握するのに聴覚に頼っています。そのため、女性の高い声の方が聞き取りやすく安心感を覚えるのでしょう。また動物の声の高さは体の大きさに反比例し、大きな動物ほど声が低くなります。猫同士の喧嘩の際に低い声で唸るのは、実際よりも自分の体を大きくみせるためです。低い声で話しかけると、知らずに猫を怖がらせているかもしれません。
猫も甘える時やご飯が欲しい時は高い声(猫なで声)を使い、友好的な意思を表示をします。猫に話しかける時は少し声を高くするというのは、獣医師も使うテクニックです。地声が低くてもできるだけ高い声で話しかけましょう。
男性はがさつ?
猫にタッチする時に、どれくらい気を使っているでしょうか。犬は比較的どこを触っても、強くゴシゴシ撫でても喜んでくれますが、猫はそうはいきません。少し強さを間違えると、少し前までゴロゴロ喉を鳴らしていたにもかかわらず、突然噛み付いてくることもあります。男性は握手のときもガッツリ握り、友達の間では体をぶつけ合い挨拶をすることもあります。強いフィジカルコンタクトを好む男性は猫と相性が悪いです。
食事には勝てない
共働きはもちろん、男性が家事や育児を担当する主夫が増えているとはいえ、猫のご飯を担当しているのはお母さんが多いと思います。実は猫はお母さんが好きなのではなく、ご飯をくれる人が好きなのかもしれません。
手取り早く愛猫の信頼を得るにはご飯係を率先して行うことをお勧めします。猫は非常に現金な生き物なので、その人の近くで嬉しいことがあるとその人の近くにいる時間が増えます。同じ時間を過ごすうちに懐いてくれるでしょう。
まとめ
今回お母さんが猫に好かれる理由を考えてみましたが、反対に物静かなお父さんは猫に好かれます。寝ている時に起こされるなど積極的に触れられるのを嫌う猫が多いので、逆にあまり猫が好きじゃない人の方が猫に好かれるという話はよく聞きます。猫愛が強すぎて、かまいすぎていませんか? 男性でもポイントを抑えればきっと猫に懐かれるはずです。
■著者プロフィール
山本宗伸
獣医師。Syu Syu CAT Clinicで副院長を務め、現在マンハッタン猫専門病院で研修中。2016年春、猫の病院 Tokyo Cat Specialistsを開院予定。猫に関する謎を掘り下げるブログnekopediaも時々更新。