パナソニックは3日、単1形乾電池「エボルタ」を動力とした車両で世界最長距離の鉄道走行を行い、ギネス世界記録の取得に挑戦すると発表した。同日、埼玉県立川越工業高等学校にて、「エボルタチャレンジ 2015」発表会も行われた。

「エボルタチャレンジ 2015」発表会に川越工業高校の生徒たちも参加

「エボルタ」が発売された2008年以降、ハイパワーと長持ち性能を実証する実験が毎年実施されている。2013年、同商品を動力とした「プラレール」新幹線E6系が全長5.60844km(レール2万6,667本)を走破し、ギネス世界記録(最も長いプラスチック製おもちゃのレール)に認定。昨年は総重量約1トンの車両が旧小坂鉄道(秋田県)の廃線約8.5kmを完走し、その模様はテレビCMでも放映された。

今年は「乾電池のパワーで 世界最長距離 鉄道走行チャレンジ」と銘打ち、川越工業高校電気科「電車班」の生徒13名が車両1両(幅1,500mm×高さ2,900mm×長さ4,000mm、車体重量約1.1トン)を設計・製作。現役の路線である由利高原鉄道 鳥海山ろく線(秋田県)を舞台に、約20kmの有人走行(10kmの区間を往復)を行い、ギネス世界記録(乾電池で走る車両が線路上を走行した最長距離)の取得をめざす。発表会にて走行ルートも明らかにされ、前郷駅がスタート地点・ゴール地点、矢島駅が折返し地点とされた。

「エボルタ」で動く車両は本番に向け、改良が進む。完成イメージも置かれてあった

川越工業高校電気科「電車班」は2011年以降、「川工電鉄」と称して電車製作に取り組んでおり、今回の使用車両も歴代の3年生によって製作された車両がベースとなっている。「授業で習ったインターロック回路を使い、前進中に後進がかからない安全な回路を作りました」「ブレーキはバイク用の油圧ブレーキを採用しました。営業線を走るため、これまで1つだったキャリパーを2つにして、より安全性を高めました」など、生徒たちが報道陣へ車両製作のポイントを説明する場面もあった。

車両のデザインは同校デザイン科の生徒たちが手がけた。現時点で未完成だが、由利高原鉄道のYR-1500形をイメージし、車体上部に「エボルタ」を乗せたデザインとなる。この車両が走る前郷~矢島間はのどかな田園風景が広がる区間だが、途中、鉄橋やトンネル、S字カーブ、段差の大きい踏切といった"難所"も。

8月末に由利高原鉄道を視察し、試走を行った際にも、自力で走行することができず、ラッセル車に牽引されての走行を余儀なくされたという。本番に向けて課題も残る状況だが、生徒たちは不安を見せることなく、「やるからには絶対に成功させたい」と話していた。「電車班」を指導する君島栄先生も、「生徒たちは非常に優秀。この子たちならなんとかなると思っています」とコメントした。

今回、ギネス世界記録を取得するためのルールとして、「市販の乾電池のみで車両を動かすこと」「車両だけで700kg以上を要すること」「挑戦中、車両を修理してはならない」「"上り坂"方面でスタートすること」「20kmを走りきること」の5つが定められた。「世界最長距離 鉄道走行チャレンジ」は11月3日12時10分に開始される予定だ。