FET内蔵DC/DCコンバータ
図4に示すのは、入力電圧範囲が2.7V~5.5Vの2A DC/DCコンバータ「ISL8002B」の一般的なアプリケーション回路である。抵抗、コンデンサ、インダクタを含めて、数個の外付け部品しか必要としない。このコンバータは位相補償回路とパワーMOSFETを内蔵することで、堅牢性の高い設計、最小の部品点数、最大95パーセントの高い効率を保証する。
コンバータのNo.5ピンが、ソフトスタート(SS)機能と出力トラッキング(TR)機能の両方を提供している。このピンにH-levelを入力すれば、ソフトスタート時間は内部で1msに設定される。しかし、外付け部品を使用すれば、さまざまなソフトスタート方式を実現できる。図6は、SS/TR機能を用いて外部でソフトスタート時間をプログラムする方法を示す。
ソフトスタート用抵抗RSSとコンデンサCSSを設定するだけで時間を調整できる。この関係を近似的に式1で表す
このソフトスタート機能は、他の出力のトラッキング用に構成することも可能である。図7は、出力電圧Vout1対Vout2のレシオメトリックなトラッキング構成を示す。
さらに、SS機能とTR機能を結合して、2つの出力電圧を強制的に同時に上昇させることも可能である。また、式1で表したソフトスタート時間と同様に、シャットダウン機能も互いにレシオメトリックに追従する。
コインシデンタル・トラッキングは、図8に示す構成により可能である。帰還ループの出力電圧検出用分圧抵抗と同じ比の分圧抵抗を追加するだけである。この場合、すべての出力電圧が、メイン・レールに応じた同じ電圧とスルーレートで上昇する。一般的には、最も電圧の高いレール出力に他のすべてのレール出力が追従する。そして各出力は、各々の出力電圧設定値に達すると分岐していく。すべての出力レールのスタートアップとシャットダウンの適切な制御が可能となり、図1のような内蔵ESD保護ダイオードの導通や順方向バイアスを防止できる。最も重要な点は、この設計技術により、システムの信頼性の低下、ラッチアップ、さらには現場でのシステム障害などの事態を防止できることである。
結論
「ISL8002B」のようなFET内蔵降圧レギュレータは、出力立ち上がり/立ち下がりシーケンス時の電圧トラッキングにおけるさまざまなソリューションを簡単に提供できる。システム電圧トラッキングに必要なほぼすべてを、本稿で取り上げたブロック回路の1つにより構成可能である。こうした構成に用いるレギュレータの数は2つに限定されず、システム内のレール数に応じて変更可能である。レシオメトリック・トラッキング用には、すべてのSS/TRピンを1つに結合すればよい。あるいは、分圧抵抗を用いてシステムをコインシデンタル・トラッキング用にプログラムしてもよい。レシオメトリック・トラッキングとコインシデンタル・トラッキングのいずれでも、ESD保護ダイオードの不要なストレスを防止し、システム全体の信頼性を向上する。
著者紹介
Tu Bui
Application Engineering Manager
Intersil