世界的に原油価格の下落が続いています。クルマ利用者にとって、日々のガソリン価格は気になるところ。これだけ下がっているのなら、いつ、どこで、どんなふうにガソリンを入れても大差ないと思いますが、それは本当でしょうか。投資的な観点で検証してみました。
過去4年で最低水準のレギュラーガソリン価格
今年の夏は行楽地へドライブに行くのも、ガソリン代をあまり気にしなくてよかった、という人も多かったことでしょう。実際、年初はレギュラーガソリンがリッター145円台だったのが、ちょうどお盆休みの時期には、全国平均でリッター140円まで下がりました。これは資源エネルギー庁の店頭小売価格のデータですが、実感値としてはリッター130円台、地域によっては120円台というところもあったのではないでしょうか。
データをグラフ化してみると、昨年は1年を通してガソリン価格が高騰し、まさにお盆の時期に最高潮。リッター170円直前まで値上がりしました。1年で実に30円近い値下がりになったわけです。
大元となる原油価格は世界情勢のみならず、為替相場にも影響を受けますが、ここ最近は円安傾向にありますが、それを凌駕するほどの原油価格の下落が続いている、という状況にあります。
さて、本題は、私たち庶民にとって、家計にやさしいガソリンの入れ方があるのか、ということです。日々消費するなかで、これほど価格が変化する商品はあまりありません。スーパーで買い物をしていても、牛乳は特売日に買おう! と思うぐらいで、日常的には、それほど大きな価格差がないでしょう。
こういう価格変動がある商品で、毎日ではないけれど、頻繁に買わなければいけないものに関しては、いかに安いタイミングで買えるか、という点が気になってきます。しかし、ガソリンスタンドごとに特売日が決まっていても、その日のガソリン価格は昨日より安いのか、明日のほうがもしかして安くなるのでは、と考えてしまいます。
そこで、投資的な発想で、ガソリンのオトクな入れ方がないか、検証してみることにしました。
決まった量を買うほうがトクか、決まった金額で買うほうがトクか
投資の世界では、価格変動がある投資商品を購入する際に、毎月決まった額で購入するほうが結果的に、安く買える「ドルコスト平均法」という考え方があります。
図にあるように、毎月決まった量を6回購入すると、合計6万円で60口の投資商品が買えます。一方毎月決まった額で6回購入すると合計6万円で61口の投資商品が買えます。それぞれ1口当たり、いくらで買えたかを計算してみると、毎月決まった額で買ったほうが、結果的には安く買えたことになります。
図を見て、ならば800円のときに、たくさん買えばいいじゃないか、と思われるかもしれませんが、それは後から思うことで、その時点では800円が安いかは誰もわからないのです。こうした価格変動があるものは、月に平均して、毎月一定金額で買うのが最良の方法と言われているのです。
では、同じようにガソリンの入れ方も一定の金額で入れたほうがオトクなのでは? と考えますね。実際に筆者の知人に、満タンではなく定額購入するという人がいます。本当にトクなのでしょうか? 今年の4月から毎週1回ガソリンを入れたとして試算してみましょう(全19回)。価格データは、先の資源エネルギー庁のデータを使用しました。すると…。
毎週1回、20リッター入れた場合
総支払金額 : 5万4030円
総購入リッター数 : 380リッター
1リッターあたり : 142.18円
毎週1回、3000円分入れた場合
総支払金額 : 5万7000円
総購入リッター数 : 401リッター
1リッター当たり : 142.15円
結果としては、リッター0.03円の違いにしかなりませんでした。長期間では30円ほどの変動幅があったガソリン価格ですが、今年4月からは140円~145円程度の範囲でしか変動しておらず、どのタイミングでどんな入れ方をしても、それほどリッター価格を押し下げることにつながらなかった、ということでしょう。ちなみに、2週に一度40リッター満タンで入れた場合は、リッター142.06円。やはり、あまり価格差はありません。
結論としては、現状のガソリン価格の動きであれば、ガソリンの入れ方をあまり気にしなくてもいいということです。この先、急激に価格が上下するようなことがあれば、結果は変わってくるかもしれません。
しかし、家計管理の面では、毎月ガソリンに使ったお金が変動するよりは、毎月1万円、というように固定した金額で管理するほうが、わかりやすいという面はあるでしょう。少なくとも行き当たりばったりでガソリンスタンドを選ぶのではなく、近隣で一番安いポイントを抑えておくことが、一番オトクということかもしれません。
(※写真画像は本文とは関係ありません)
<著者プロフィール>
伊藤加奈子
マネーエディター&ライター。法政大学卒。1987年リクルート(現リクルートホールディングス)入社。不動産・住宅系雑誌の編集を経て、マネー誌『あるじゃん』副編集長、『あるじゃんMOOK』編集長を歴任。2003年独立後、ライフスタイル誌の創刊、マネー誌の編集アドバイザーとして活動。2013年沖縄移住を機にWEBメディアを中心にマネー記事の執筆活動をメインに行う。2級FP技能士。