起業することを考えつつも、小方氏は大学卒業後、大学で学んだ知識を活かせる総合建設コンサルタント会社に就職。しかし、その後退職し、起業を決意する。
「当時の土木業界には大きな問題がありました。その問題を堂々と指摘する若手ということで、社内でさんざんやりあった事もあり、私としては会社に残る方が勇気のいる選択でした。幼い頃から要領がよく、学生時代にもアルバイトで十分な稼ぎを得られていたため、生きることに対する不安はありませんでしたね」と小方氏。
退職後は、起業準備期間のため中国に1年間留学し、帰国後に中国の健康食品や雑貨を扱う会社を設立した。しかしこれは、天職だと感じていたわけでなかったようだ。
「生活のための仕事ですから、何でもよかったのです。きちんと家賃を支払って生活していくための仕事をしながら、ビジネスモデルを考えていました。ビジネスモデルほど大切なものはなく、少しのズレが成長した時に大きなズレになります。誰に何を売るのかはよく考えるべきでしょう」と小方氏は語る。
日本の「過剰在庫」に目をつけ解決した「オンライン激安問屋」
最初の会社はある程度軌道に載ったが、あるとき大手企業から大量の過剰在庫を抱えさせられることで倒産の危機に陥り、これがきっかけで、企業が抱えている在庫を安価に販売する中間流通業「オンライン激安問屋」というECビジネスを開始する。
「96~98年頃は、在庫が資産になるため、どの企業も過剰在庫を抱えている状態でした。このままでは先がないことがわかっていながら、在庫を出す先がない。そこに目をつけたわけです。あの頃は過剰在庫を買い付けるビジネスというとアタッシェケースから札束を出すような怪しい風体の人というイメージがありましたが、シンプルでわかりやすいビジネスモデルを提案し、商品の出所は明かさないという安心感が受け入れられました」と、小方氏は「オンライン激安問屋」設立の背景を説明した。
提供企業の匿名性は商品を一旦自社で引き取り、自社商品として販売することで実現。ボリュームディスカウントの要求や返品要求のある大規模小売店ではなく、定価に近い価格できちんと買い取ってくれる小規模小売店に少しずつ販売することでメーカーが抱えていた悩みも解決した。話題と金と人を集めるにはどうしたらよいのかという考えで生み出されたビジネスだったが、日本の抱える課題に正面から取り組んだことが評価された。
また、当時はBtoCのビジネスが多く、BtoBのビジネスが立ち後れていたため「オンライン激安問屋」はかなり注目された。また、小方氏は突然の大きな資金の調達にも成功している。
「まだ月額の売上が100万円くらいしかなかった頃にシンガポールからビットバレーを視察に来た華僑に、BtoBビジネスを展開している人として紹介してもらう機会がありました。彼を空港まで送る電車の中でビジネスのプレゼンテーションをしたところ、シンガポールテレコムのコー・ブーン・フィー氏に紹介され、いくらでも出資するといわれたのです」(小方氏)