ビールやお菓子、飛行機など、これまで様々な工場見学の紹介をしてきたが、たまには外から眺める夜の工場はいかがだろう。近年では気軽にダイナミックな夜景を楽しめる工場夜景クルーズやツアーがブームとなっているが、じっくり自分のペースで眺めてみるのもオツなもの。そんな近未来的で不思議な魅力のあふれる、"見て楽しむ"東京近郊の工場夜景スポットを紹介しよう。
幻想的な輝きを見せる京浜工業地帯(神奈川県川崎市) (c)flickr/Kabacchi |
工場夜景のメッカ、川崎の工業地帯
東京近郊の工場夜景の中でも、その美しさで全国的に人気な「京浜工業地帯」(神奈川県川崎市)を眺めに出掛けてみてはいかがだろう。その鑑賞スポットとして特にオススメしたいのが人工の砂浜を有する「東扇島東公園」(神奈川県川崎市)だ。
日中はバーベキューやドッグランなども楽しめる活気ある公園だが、夜はライトが灯されて幻想的な雰囲気を作り出す。もちろんポイントはその夜景。波風を感じながら工業地帯の輝きを望めるだけでなく、羽田空港から飛び立つ飛行機も見られるという、ぜいたくすぎる眺めとなっている。工場夜景をバリバリ撮影したい人も、デートで訪れたい人にもぴったりなロケーションだ。アクセスはJR「川崎駅」よりバスを利用しよう。
横浜散策後はロマンチックな工場夜景を
同じく神奈川県の港町、横浜で見逃せないのが「JX日鋼日石エネルギー根岸製油所」(神奈川県横浜市)の夜景。夕暮れ時まで横浜の港や中華街を散策し、少し足を伸ばして見に行ってみたい。ここではいくつかある鑑賞スポットのうち、オススメの2つを紹介しよう。
ひとつ目は「本牧市民・臨海公園」。ベンチなどもあり、ゆっくりと工場夜景が望めるスポットだ。フェンスがあるため視界が遮られてしまうのが少々残念なところだが、きらめく光を眺めつつ過ぎていく時間を楽しむにはいい立地だろう。アクセスはJR京浜東北根岸線「根岸駅」よりバスで約8分となる。
2つ目は路上からの鑑賞になってしまうが、「東京ガス 根岸工場」の海に面した一帯は製油所の夜景を存分に楽しめるスポットだ。海を隔てたパノラマな工場夜景を望むことができる。海沿いを歩いて好みの景色を探してみよう。アクセスはJR根岸線「磯子駅」よりバスで約10分となる。
ちなみに、「JX日鋼日石エネルギー根岸製油所」では工場見学も行っている。企業や学校などが主催の教育・研修目的のもので、5人以上での見学に限られるが、内部を見てから外の夜景を眺めてみるのも面白いのではないだろうか。
群馬県でオススメの工場夜景
少し離れて群馬県の「東邦亜鉛安中製錬所」(群馬県安中市)は海浜とは違った魅力のある夜景を見ることができる、工場夜景マニアに人気のスポットだ。
線路が工場内にまで敷かれ、亜鉛の材料を列車ごと運び込んでいるため駅に直結しているというこの工場、ホームの背後には丘の斜面を覆うようにプラントがそびえている。間近で煙をあげる様子は圧巻だ。夜景を見るには駅前の歩道橋に上ってみよう。肉眼では少々暗く見えてしまうため、撮影向きかもしれない。
アクセスはJR信越線「安中駅」の目の前で、JR「東京駅」から安中駅までは新幹線などを利用して約1時間となる。
一度は見てみたい茨城県の工業地帯
東京からは少し距離があるが、「鹿島臨海工業地帯」(茨城県神栖市)は未来の都市を眺めるかのような、光の散りばめられた景色が美しい工業地帯だ。夜景を望めるスポットは工業地帯南側の中心部に作られた「砂山都市緑地」の丘の上や「港公園」がオススメ。
港公園には高さ52mの展望塔があり、工業地帯のほか国際貿易港まで望むことができる。塔の利用料金200円が必要で、17時まで入館が可能。夏場は暗くなる前に閉館してしまうため、塔から夜景を見るには日照時間の短い冬の方がいいだろう。公園自体は24時間開園している。夕暮れまで芝生で港を眺めながらゆっくり過ごしてみてはいかがだろうか。
それぞれの公園へのアクセスはJR鹿島線「鹿島神宮駅」より車で30~20分ほど。「東京駅」から鹿島神宮駅までは高速バスなどで2時間ほどとなる。可能であれば車で訪れた方が無難かもしれない。
夜景を撮影する場合は長時間露光が可能な一眼レフカメラなどとカメラを固定する三脚を持っていきたい。また、いずれのスポットも屋外なことから、心置きなく眺めるために夏場は虫除け、冬場はコートをお忘れなく。
※写真はイメージで本文とは関係ありません
筆者プロフィール: 木口 マリ
執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。旅に出る度になぜかいろいろな国の友人が増え、街を歩けばお年寄りが寄ってくる体質を持つ。現在は旅・街・いきものを中心として活動。自身のがん治療体験を時にマジメに、時にユーモラスに綴ったブログ「ハッピーな療養生活のススメ」も絶賛公開中。