特定の食物が引き金となってさまざまな症状を引き起こす「食物アレルギー」。毎日の食事に関わることだからこそ、気をつけたい疾患の1つです。どんな場合に食物アレルギーと診断されるのか、そして治療の基本となる「食物除去」について知っておきましょう。
食物アレルギーと診断される3つの場合
「食物アレルギー」と診断される場合には次の3通りがあります。まず、食後すぐに激しいじんましんなどの皮膚症状や、アナフィラキシーショックなどの全身症状が出た場合、「即時型食物アレルギー」と診断されます。アナフィラキシーショックは血圧低下や意識障害などを伴うアレルギー反応で、処置が遅れると命に関わることもあるので要注意です。
一方、このような即時型の症状は出なくても、下痢や便秘、皮膚炎などの慢性的な症状が気になって原因を調べてみた結果、食物アレルギーと判明することもあります。このタイプは症状が遅れて現れるので、「遅延型食物アレルギー」と呼ばれています。
また、即時型の発生には「IgE抗体」、遅延型の発生には「IgG抗体」が関わるとされています。全く症状がなくても、抗体の値を調べる採血検査によって、いずれかの食物アレルギーと診断されることもあります。
食物除去を続けると耐性ができることも
アナフィラキシーショックなどの即時型の症状が出た場合、食べる量によっては思いもかけない重度の症状が出ることがあるので、疑わしいと思われる食べ物を口にしないよう細心の注意が必要です。これを「除去食療法」や「食物除去」といいます。
除去食療法で注意することは、除去する食材の品目を必要最小限にすることです。きちんと採血をした後、食べ物を制限することで得られるメリットとデメリットを比べて、除去する品目は最小限にとどめた方がよいでしょう。そうすることで栄養素の不足を防げます。
遅延型の症状がある場合は、まず食事記録をつけ、皮膚や便の状態など身体の変化を見ながら判断することが大切です。その結果、明らかに症状が悪化する食品や、抗体検査で高値だったものに関しては「ローテーション式食事療法」を行います。ローテーション式食事療法とは、アレルギー反応を起こす可能性のある食品の同じ科に属す食品を4日に1回以上は食べないようにする食事法です。例えば月曜日に乳製品を食べた場合、金曜日までは牛肉も含め乳製品を摂(と)らないようにします。
いずれの症状の場合でも、除去を続けて半年~1年ほどたつと耐性ができることが多いです。そうすると抗体量が減少し、やがて除去していた食べ物を口にしてもはっきりと症状が出なくなったり、軽度で済むようになったりするようになります。除去をいつまで続けるかは、定期的にアレルギー検査や、経口負荷試験(原因となる食物を食べて確かめる検査)を受け、結果を見て徐々に再開し判断します。
食品表示をよく見る習慣を
普段からの心がけとして、食品の裏の表示までしっかりと読む習慣をつけ、添加物などにも配慮するようにしましょう。除去を続けると、同じ食品パターンに陥りがちになり、栄養摂取の偏りが生じやすくなります。それを防ぐためにも、どの食品にどのような栄養素が含まれるのか、リストを作っておくと便利です。
例えば乳製品のアレルギーがある場合、不足が心配なのはカルシウム。カルシウムは乳製品以外でも、煮干しや緑黄色野菜、大豆などに含まれます。また、マグネシウムやビタミンD、ビタミンKなどと組み合わせて摂ることで骨への吸収も高まることも覚えておくとよいでしょう。
このように食材の栄養バランスを考えながら組み合わせ、いろいろなバリエーションを作って楽しみながら継続することも大切です。
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著者プロフィール: 関由佳(せき・ゆか)
内科医、misoドクター、Foodoctor、Medical Chef
専門は内科、予防医学。研修医の頃に野菜ソムリエの資格を所得。同時期にアメリカのシアーズ博士のもとでZONEダイエットを学び、日本人に合わせた食事バランスガイドを作成。ダイエット外来や糖尿病治療にもそのメソッドを応用し独自の栄養指導を確立した後、レシピ本『ゆるゆる糖質オフダイエット』を出版。現在は薬ではなく食べもので予防するFoodoctorとして個人に合わせたオーダーメイドの栄養療法を行う傍ら、misoドクターとして味噌ファスティングの指導行うなど幅広く活動中。また2011年よりHappyAgingLabo会 を主宰し毎月さまざまなテーマでセミナー&料理教室を開催し、ブログ・Dr.Yukaのゆるゆるバランスダイエットでも情報を発信する。