「Windows Insider Program (WIP)」に参加することで、ユーザーは不具合や機能に関する意見をMicrosoftへ送信できる。だが、そのフィードバックを送信しても「自分の意見がWindows 10に反映されているのか」と疑問に思うユーザーもいるだろう。MicrosoftはWindows 10以前から診断データを収集しているが、Windows 10はそれに加えて、使用状況を分析したデータやWIPのフィードバックをもとに改良や新機能の実装について判断している。
フィードバックはどのように反映されるか
具体的には、我々が登録したWindowsフィードバックを専用のデータベースに格納。翻訳機能を使って、各国のWindows開発関係者が共有しているという。そして、開発メンバーがすべてのフィードバックに目を通して修正に値するか、優先度が高いかなどを判断し、実際の修正・開発が始まる。
その開発陣もかなりの数に上る。関係者に尋ねてみたところ「数千~数万人」と把握しきれない規模であるようだ。純粋なOS開発チームだけでなく、アプリケーション開発チームやファンダメンタルチームなども含まれるため、特定するのが難しいのだろう。ちなみに、日本の開発チームが集まるマイクロソフトディベロップメントのWindows 10関係者は50~60人。開発は世界中のメンバーと常に共同作業を行うため、この数字が少ないと判断するのは早計だ。
話をフィードバックに戻そう。例えばWindows 10の開発段階では、MS-IMEの単語登録機能は「単語」と「読み」のテキストボックスのいずれかが空欄のままでも登録できたという。関係者によれば、正しく単語が登録できないというフィードバックを受けて調査し、UIデザインを変更したそうだ。さらに「クラウド候補」の実装にあたり、当初は同機能をアピールする通知を表示していたが、やはりユーザーからフィードバックを受けてUIデザインの変更を行っている。
このようにユーザーからのフィードバックで完成度を高めてきたWindows 10 Insider Previewは、今後もWIPBで進化するため、Microsoftは多くのフィードバックをユーザーに切願しているという。では、どのようなフィードバックが受け付けられやすいのか関係者に訪ねたところ、「バグに関しては再現性のあるフィードバックがありがたい」という。
Windows開発陣はフィードバックに目を通した際、バグを再現するための操作を必ず試しているが、その手順があれば再現に失敗することも少なくなるそうだ。確かに再現プロセスを明確に記述するのは難しく、筆者も気付かないうちに問題が発生するようになった経験はWindows 10リリース以降、何度も経験している。だが、そのまま放置していても改善する可能性は乏しいため、可能であれば「Windowsフィードバック」経由で問題を報告して自身のメリットにつなげてほしい。
Insider Hubを使用可能にする
Windows 10 Insider Previewユーザーには見慣れた「Insider Hub」は、Windows 10にアップグレードしても標準ではインストールされていない。そもそも同ツールはWIPBの最新ニュースやバグフィックスの結果を確認するためのクエストを実行するためのものだ。WIPに参加したなら、下記の手順でインストールしておくと何かと便利だ。
スタートメニューや検索ボックスからInsider Hubを起動すると最初に「クエスト」が現れる。こちらはWindows 10の機能やアプリケーションを指示どおり操作して、その結果が意図どおりになるか否かを判断するものだ。大半のクエストはメッセージや画面が英語だが、ステップ操作の内容は単語を拾っていけば何となくわかるだろう。
またプロフィールには、フィードバックやクエスト件数といった実績(アーチブメント)を示すバッジを確認できる。当初のInsider Hubには実装していなかった機能だが、ゲーミフィケーション的な要素を楽しむことで、わずかながらでもフィードバックの励みとなるだろう。
MicrosoftはRTM(Release To Manufacturing version)、GA(General Availability version)といった開発プロセスを捨て去り、WIPのようなスタイルに移行した。そのため我々のフィードバックは製品品質の向上に大きな影響を与える存在となった。過去を振り返れば、Windowsに不満があっても掲示板などで愚痴をこぼすのが関の山。だが、新たなスタイルに移行したMicrosoftには、我々の意見が確実に伝わる。
阿久津良和(Cactus)