日本は200mmファブ最多保有国
SEMIの半導体ファブ生産能力調査によると、300mmファブの生産能力に関しては、韓国が世界の27%を保有しており世界トップ、台湾が24%で2位、日本は19%を保有しており世界第3位である(図4左)。今後、300mmファブ建設ラッシュの台韓とファブライト・ファブレス化する日本の差は大きく開いていくものと予想される。一方、200mmファブの生産能力では、日本が他地域を抑えて21%で世界トップであり、台湾が18%、北米15%と続く(図4右)。要するに200mmファブは世界中で日本が一番保有しているということだ。SEMI Japanによると、日本には110もの200mm量産ファブ(月産1万枚以上)があり、マイコン、MEMS、センサ、アナログ、パワーデバイス、LCDドライバ、その他さまざまなMore-than-Mooreデバイスを生産しているという。
図5は、世界中の200mmファブで生産される半導体デバイスの種類を10年前(2005年、左下)と2015年(右上)とで比較している。2005年には、メモリ、ロジック、およびファウンドリでの受託生産品がそれぞれ3割を占めていたが、2015年には、200mmで生産されていたメモリのほとんどがすでに300mmファブへ移行してしまったため、ファウンドリが半分を占め、いままで1桁シェアだったアナログICやディスクリ―ト(個別半導体)が2桁へと伸びてきている。
図5 2005年(左下)と2015年(右上)における200mmファブでの生産品目の内訳。2005年には、メモリ、ロジック、およびファウンドリでの生産受託製品がそれぞれ3割を占めていたが、2015年には、メモリが300mmファブへ移行したため、ファウンドリが半分を占め、アナログやディスクリ―トが伸びてきている (出所:SEMI) |
中古200mm装置取引価格が急騰
前出のGreig氏(図1)は、中古の200mm半導体製造装置が、大量に市場に出てくるきっかけとなるのは、主に(1)大手半導体メーカーが200mmの古いラインを300mmに転換するタイミング、(2)米国、欧州、日本のIDMがファブライトやファブレスに業態変更するタイミング、(3)IDMが200mmラインを閉鎖し製造装置を売却するタイミングである。一方、200mm装置の新たな需要が生ずるのは、(1)IoT関連、モバイル、ウェアラブルセンサ、LED、MEMSなどの新応用分野の出現、(2)アジアのファウンドリの200mmライン拡充、(3)インド、ベトナム、ブラジルなどの半導体製造参入に伴う新たな中古装置市場の誕生などによる」と話す。
Greig氏によると、200mmファブが見直されているおかげで、200mm半導体製造装置は不足気味で、このため中古品の取引価格が上がってきており、特にスキャナ(露光装置)は高騰しているという(図6)。
今後、IoT用センサの需要が急激に増えそうなので、このために必要な200mmウェハの消費量も、製造装置同様、かなり増加しそうだという(図7)。
図7 IoT向け半導体デバイス製造に必要なシリコンウェハ枚数の推移予測。200mmウェハを用いたセンサ生産が急増すると予測される (出所:GartnerデータをもとにSurplus Globalが作成) |
MEMSやIII-V族やパワー半導体など、200mm以下の小口径ウェハ用半導体製造装置を製造している米国ClassOne TechnologyのCTOであるKevin Witt氏によると、中古装置市場で、200mm用は取引全体の過半を占めており、ここ数年は年率25%の伸びを示しているという。しかし、200mmファブでも新機能実現のため新たなプロセスが必要な場合が生じているため、すべての装置を中古で揃えられるわけではない。例えば、200mmあるいはそれより小口径用の自動めっき装置は、中古市場で見つけるのは不可能である。同社はそのような小口径対応製造装置の専業メーカーして2013年に誕生したが、200mmファブの復権であらたなビジネスチャンスが生まれている。
SEMIの調査では、200mm製造ラインは、ファウンドリを中心に生産ラインへの投資が継続しており、また200mmシリコンウェハの出荷面積も増加傾向にある。SEMIは200mmファブがこれから2020年にかけて急成長が見込まれるIoTデバイス、とりわけセンサの量産プラットフォームとなるとみており、200mm装置、ウェハ、消耗材料、保守部品から環境保全対策、各種サービス、リ―ス・金融に至るさまざまな分野であらたなビジネスチャンスが生まれることを期待している。450mmウェハ(450mm記事参照)が本格的に登場してくる2020年代には、今度は老朽化した300mmラインが200mmラインの役割を引き継ぐことになるだろうから、それまでは200mmファブは延命しそうな勢いだ(図2参照)。