残業代未払いなどが問題になることが多いが、「時間外労働」について本当にきちんと理解できているだろうか? 今回は、読者から届いた疑問に対して、アディーレ法律事務所所属の岩沙好幸弁護士が回答する。
Q.うちの会社は遅刻や早退は1分単位で記録させるのに、残業時間は15分単位の記録になっています。これは違法ではないのでしょうか?(28歳男性)
岩沙弁護士の回答
厚生労働省の通達(昭和63年3月14日基発第150号)では,「1カ月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること」は違反ではないとしています。
これは1カ月の残業時間の合計を算出する場合には、例外として切り捨て切り上げを行っていいと定めたものですから、反対に、それ以外の場合は切り捨てや切り上げを行ってはいけないことになります。
したがって、1カ月の合計時間を算出する場合以外は,原則通り1分単位で計算しなければならず、15分単位で記録させるのは違法です。
このように1分単位で残業代を支払わなかった場合、具体的にいうと労働基準法24条1項で定められた賃金全額払いの原則に反するということになります。すなわち,25分残業しているのに、15分相当しか残業代を支払わなかった場合、10分の分について賃金を払っていないことになり賃金全額払いの原則に反することになります。
なお、賃金全額払いの原則がありますから、遅刻や早退についても1分単位で記録するのが原則です。ですから、遅刻や早退について15分単位にすれば、残業時間も15分単位にしていいわけではありません。
(画像はイメージであり本文とは関係ありません)
岩沙 好幸(いわさ よしゆき)
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業、首都大学東京法科大学院修了。弁護士法人アディーレ法律事務所。 パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。 動物好きでフクロウを飼育中。近著に『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。『弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ』も更新中。