3年ごとに見直されている介護保険料。2015~17年度は2012~14年度に比べて11%上がり、全国平均で月5514円。初めて5000円を超えました。制度が始まった2000~02年度から保険料は毎回引き上げられ、25年度には8000円を超えるという試算もあります。この状況は、私たちにどんな影響があるのでしょう。

介護保険料を支払うのは40歳、サービスを受けるのは原則65歳から

介護保険とは、簡単にいうと健康保険の介護版。保険料を支払うことで介護が必要になった時、費用の一部を負担すれば介護サービスを受けられる制度。介護保険に加入するのは40歳になった月からのため、40歳未満の人にとっては「それは何?」という制度かもしれません。

介護保険は65歳以上の人が第1号被保険者、40歳から64歳の人が第2号被保険者とされ、第1号の人は病気等の原因を問わず必要が認められれば介護サービスを利用できますが、第2号の人は16種類の特定疾病の場合のみに限られます。第1号の保険料は市区町村ごとに設定された基準額をもとに算出され、第2号は加入している健康保険ごとに決められた保険料率で負担額が決まります。会社員の場合は健康保険料に上乗せされる形で天引きされるため、40歳以上の人でも保険料を払っている自覚がない人が多いかもしれません。

8月から介護保険法の改正で利用者の負担が増える

介護保険は2000年の導入以来、利用したサービスの1割を自己負担することが原則でした。ところが利用者が急増していることなどから、介護保険法の改正で8月からは本人の合計所得が160万円以上の人は原則2割負担となります(下図)。

今回の改正で、もう一つ大きなものがあります。それは特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの施設へ入所した際の、食費や住居費に関する補助の条件。所得要件だけでなく資産要件も加味されるようになり(下図)、補助の対象外になると負担額はこれまでの2倍になるという試算もあります。

介護問題は「まだまだ先のこと」ではありません

保険料アップも自己負担額の増加も先のことだから、いまから心配しても仕方がないと思う人も多いでしょう。確かに自分が利用するまでには時間があるかもしれませんが、その前に「親」がいることを忘れてはいけません。

医療保険は保険証を持って病院へ行けばすぐにサービスを受けられますが、公的な介護保険を利用するにはいくつかの手続きが必要です(下図)。概略だけでも知っておかないと、いざというときすぐに行動に移せません。

今後、保険料アップや自己負担額が増加することで、年金だけでは生活できない高齢者が増える可能性があります。特別養護老人ホーム(特養)の補助要件が厳しくなりますが、そもそも、特養の空きを待つ高齢者は全国で50万人はいるといわれます。これまでは要介護1から入所できましたが、これからは介護の必要が高い要介護3以上に限定され、軽度の場合は入所そのものが難しくなります。特養以外の介護施設ならばスムーズに入居できるところもありますが、費用が高額な施設がほとんどです。いざというときに困らないよう介護問題にも関心を持ち、親が元気なうちに将来について話し合っておくことが必要です。

<著者プロフィール>

鈴木弥生

編集プロダクションを経て、フリーランスの編集&ライターとして独立。女性誌の情報ページや百貨店情報誌の企画・構成・取材を中心に活動。マネー誌の編集に関わったことをきっかけに、現在はお金に関する雑誌、書籍、MOOKの編集・ライター業務に携わる。ファイナンシャルプランナー(AFP)。