2015年7月29日、Windows 10無償アップグレードが無事始まった。多くのユーザーはWindows 10へ移行し、新たな環境を楽しんでいる方もいれば、互換性の問題などから四苦八苦している方もおられるだろう。無償アップグレードから約2週間経った8月18日(現地時間)、Microsoftは無償アップグレード初のInsider Previewとなるビルド10525をリリースしたことを公式ブログで発表した。新たに配色やメモリー管理の強化が加わっている。

タイトルバーの背景色と新メモリー管理機能を実装したビルド10525

多くの場面で語られているように、Windows 10は7月29日の無償アップグレードが完成ではない。「Windows as a Service」というキーワードを元に常に進化するOSとして、多くの新機能や仕様変更が今後も続いていく。その先陣を切るのがWindows Insider Programに参加ユーザー向けに早期提供を行うInsider Previewだ。

MicrosoftはWindows Insider Program参加者にWindows 10 Insider Previewを試してもらい、機能的な問題や意見など幅広いフィードバックを求めている。だが、既にWindows 10 Insider Previewを試している本誌読者の場合、これ以上の説明は不要だろう。早速2015年8月18日(現地時間: 日本時間は8月19日早朝)にリリースしたビルド10525の特徴を紹介する。

Windows 10 Insider Previewの新ビルド公開を知らせるトースト通知

「Insider Hub」をインストール済みの場合、公式ブログの記事を同ユニバーサルWindowsアプリ上でも閲覧できる

公式ブログの説明によれば、多くの期待を集めていた音声パーソナルアシスタント「Cortana」の日本語版は未実装だ。さらにモバイルデバイス向けのホットスポット機能はDHCPサーバーからのIPアドレス割り当てに失敗するため、正しく動作しない。

その他にもユニバーサルWindowsアプリの「映画&テレビ」は動画再生の問題が発生し、オプションの言語パックもインストールできないと言う。ただし、後者の問題は今週後半以降に改善する予定だ。Windows 10 Insider Previewを普段使いのPCにインストールすることは推奨されていないが、前述した機能が必要な場合はあらかじめ注意してほしい。

Windows Update経由でインストール中のビルド10525はコード名として「th2_release」の名称が付けられている。ちなみにMicrosoft関係者に意味を尋ねてみたところ、明確な回答は得られなかった

ちなみにビルド10525への更新プログラム名は「th2_release Professional 10525(Professional部分はお使いのエディションによって異なる)」。ビルド10240と同じく「th(Threshold?)」を名称を使用し、番号も増加した。また、インストールプロセスは以前のInsider Previewと同じく「Windowsをアップグレードしています」のメッセージが現れるアップグレード型。そのため、お使いのPCによっては30分から1時間以上の時間を要するだろう。

さて、ビルド10525に加わった新機能を大別すると1つめは配色、2つめはメモリー管理と、OSG(Operating Systems Group)FundamentalsチームのエンジニアリングジェネラルマネージャーGabriel Aul氏は、「圧縮ストアと呼ばれる新しい概念を追加した」と前述の公式ブログで説明している。

そもそもタイトルバーの背景色は、Windows 10で白色に固定されていることは改めて述べるまでもない。筆者はWindows 10無償アップグレード以前に別の連載コラムで、テーマファイルを編集してタイトルバーの配色を変更する記事を寄稿したが、初心者には難しいらしく何名かの読者から手順の説明を求められた。このことからWindows 10のタイトルバーに対する配色は、一部ユーザーの間で不評であることが分かる。

Windows 10開発チームにも同様のフィードバックが集まったらしく、ビルド10525には「設定」の「パーソナル設定\色」を開くと項目名自体に変化はないものの、「スタート、タスクバー、アクションセンターに色を付ける」のスイッチをオンに切り替えると、エクスプローラーなどのタイトルバーにアクセントカラーが背景色として加わる仕組みだ。

こちらはビルド10240で「設定」を起動し、「パーソナル設定\色」を開いた状態

ビルド10525で同項目を確認すると名称の違いは確認できないが、プレビューに描かれたウィンドウのタイトルバーが色付いていることが分かる

これは実に分かりやすい。文字色は黒色のままのため、自動選択されたアクセントカラーによっては見にくくなるものの、白色のタイトルバーに違和感を覚える方には好評を得るだろう。

設定をオンに切り替えた状態。タイトルバーの背景色がアクセントカラーとなったのは一目瞭然だ

アクセントカラーとして濃灰色を選択した状態。やはり文字色が黒色のため若干見にくくなる

もう1つはメモリー管理方法の変更。Aul氏は「圧縮ストア(Compression Store)と呼ばれる新しい概念を追加した」と前述の公式ブログで説明している。通常であればWindows 10は物理メモリーが足りなくなった場合、ページファイルにメモリー上のデータ(ページ)を待避し、新たなアプリケーションなどのために空き領域を確保してきた。

だが、圧縮ストアは同様の状況になると、プロセスごとに存在する未使用ページを圧縮することで、空き領域を確保する仕組みを備えている。その結果タスクマネージャー上でプライベートワーキングセットを確認すると、以前よりも多くのリソースを消費しているように見えるそうだ。最近はJavaScriptも実装しているガベージコレクターを連想すると分かりやすい。

ビルド10525のタスクマネージャーで確認すると、同バージョンのプログラム(Skype.exe)のプライベートワーキングセットの増加が確認できる

こちらはビルド10240のタスクマネージャー。Skype.exeのプライベートワーキングセットは約77Mバイトだった

こちらの効果は長期間使用しないと何とも言えないが、筆者の環境では64ビット版Google Chromeがクラッシュする現象に遭遇した。圧縮ストアの影響かGoogle Chrome側のメモリー管理の問題か判断できないが、32ビット版Google Chromeであれば動作するので、同Webブラウザー愛用者は一時的に32ビット版をインストールすることで問題を回避できるだろう。

32ビット版Google Chromeであれば、Windows 10 Insider Previewビルド10525でも動作する

この他にも「エクスプローラーのオプション」ダイアログに違和感を覚える動作を確認できた。そもそもビルド10240でも、コントロールパネルではなくエクスプローラーのリボンが起動すると名称が以前の「フォルダーのオプション」になるバグが残っているが、ビルド10525ではアイコンの位置がずれている。

ビルド10240の「エクスプローラーのオプション」ダイアログ。エクスプローラーのリボンから起動すると古い名称になる

「エクスプローラーのオプション」ダイアログはアイコンの描画に問題が発生していることを確認した

これはビルド10240で(キーボード&マウス操作でも)タッチ操作向けの行間設定が有効になる問題が残っていたが、ビルド10525で改善したもののアイコンの位置を表示するコードまで修正できなかったのだろう。動作自体は問題はないものの、軽微なバグが残っていることを踏まえると、早い時期に新ビルドが現れそうだ。

阿久津良和(Cactus)

前回の記事はこちら
・短期集中連載「Windows 10」テクニカルプレビューを試す(第27回) - 最後のプレビュー版? ビルド10158登場
http://news.mynavi.jp/articles/2015/06/30/windows10/
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【特集】~インストールから設定・活用まで~ すべてが分かるWindows 10大百科
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