株式投資の醍醐味は、安く買って、高く売る。これに尽きますが、問題は、どうやって銘柄を選べばいいのかということ。銘柄選びに悩んだら、株主優待のある銘柄から選ぶのも、ひとつの方法です。3月、9月決算の銘柄が多く、これから株式投資をするなら、選択肢の多い、今がおすすめです。

9月決算の銘柄は全体の約2割

企業には決算時期があります。この決算時に株主名簿に記載されていると、配当や株主優待が受けられます。現在、上場している企業は約3600社。このうち株主優待制度を設けている企業は1238社あります。決算時期別にみると、最も多いのが3月決算で約40%。次いで9月決算が約20%。その他の月を決算時期にしている企業は、各月数%で、ほとんどの企業が3月、9月決算となっているのです(中間決算も含めているため、計算の元となっている合計数は約1700)。

株主優待は、その企業のオリジナル商品や地域の特産品、レジャー施設の割引、金券など、もらえる商品は豊富なバリエーションですが、気にいった商品が見つかるかは、やはり銘柄数が多い時期のほうが見つかりやすいでしょう。では、どうしたら、株主優待がもらえるのか、購入のタイミングを見てみましょう。

権利が確定する3日前までに購入する

たいていの企業は9月なら9月末日が決算日としています。しかし、株主優待を受けるには、末日に株を購入してもダメです。株主の権利を得るためには、事前に株を購入する必要があるのです。下図に基づいて説明しましょう。

9月30日(水)が権利確定日の場合、その3営業日前までに株を購入します。これには土日は含まれません。今年の場合なら、25日(金)が権利付きの最終購入日になります。3日前というのは、株主名簿に記載するために時間が必要だからです。株主としての権利を獲得するには、この株主名簿に記載されなければなりません。通常は、証券会社で株の売買は行いますが、株主の管理は「証券保管振替機構(通称・ほふり)が行い、個人で手続きする必要はありません。

この最終購入日の翌日28日(月)は権利落ち日と言って、この日に株を購入しても、その銘柄の株主優待や配当は受け取れません。今年はカレンダー上、シルバーウイークが長く、24日、25日も有給をとれば連続9日の長期休暇も可能。その間に権利付き最終購入日が含まれますから、今年の9月末決算銘柄の購入は、注意してください。

今年の権利確定の購入スケジュールは以下のとおりです。

株主優待銘柄特有の株価の動きに注意

権利付き最終日と権利落ち日。たった1日の違いですが、これが大きな違いともなります。人気のある株主優待銘柄の中には、権利付き最終日に向けて株価が上昇し、権利落ち日にがくっと下がる傾向のものがあります。株主優待に魅力がある銘柄は、多くの買いが入るので、株価が上がり、株主になれば、翌日には売ってしまっても、株主の権利は確定しています。そのため権利落ち日に株価が下がるという現象が起きるのです。

株主優待狙いで、なおかつ長期保有しようと考えているなら、こうした株価の変化に気をつけて、高値掴みをしないようにしたいものです。個人投資家の中には、このような株価のクセがある銘柄を短期で売買して、利益を得ようと考える人もいます。もちろん、それは投資の戦略のひとつですが、買ったあとにすぐ株価が下がれば動揺するかもしれません。知識として、覚えておいてください。

どんな銘柄を選べばいいのか?

株主優待銘柄と言っても、投資であることに違いはありません。安易に株主優待品だけで銘柄をチョイスしてはいけません。2~3年のチャートを見る、直近の安値、高値を見る、企業業績を見る。こうしたことは投資をする際には最低限やっておくべきことです。配当についても、直近3年分ぐらいはチェックしましょう。無配や減配になっていれば、それだけ企業業績が落ち込んでいるということ。初めて投資をするなら、少なくともその企業が何をやっている会社なのかが、具体的にイメージできたり、実際にその会社の製品を購入したりしたことがあれば、実感を持って株主になることができるでしょう。

そのうえで、株主優待の内容をチェックします。証券会社のWEBサイトには株主優待で銘柄選びができます。さまざまなファイナンス情報のWEBサイトでも公開されているので、検索してみましょう。優待内容でスクリーニングもでき、投資額をベースにした検索も可能です。

株主優待内容は、当たり前のようですが、本当にその商品が欲しいのか、使いたいのかということがポイント。食事の割引券をもらっても、普段行かない、お店が近くにないでは、意味がありません。また化粧品なども、人によってはアレルギーがあったりしますので、自分にとって本当に使えるものかどうかが重要です。

飲料メーカーなどでは、自社製品の詰め合わせのほか、株主限定商品が贈られるケースもあり、そのプレミアム感が魅力となっている銘柄もあります。

最近は、配当と合わせて、いくら相当の株主優待品がもらえるかを総合的に計算した、総合利回りを提示しているサイトもあります。利回りが高いほうがオトクに感じますが、優待に関しては、やはり、使えるものか、好きなものか、届くとうれしいものか、といった観点で選ぶほうが、間違いはないでしょう。

株主優待ホルダーの注意

冒頭で書いたとおり、株式投資の醍醐味は利益を出すこと。昨今の株価の動きで、株価が上昇すると利益確定のために売買が頻繁になり、安定した株主の確保ができにくくなっています。そのため、企業は長期保有してもらうための策を講じています。保有する株数に応じて、株数の多い株主には優待を優遇したり、保有年数によっても優待内容を変える銘柄が増えています。本当に気に入った銘柄なら、こうした企業の動きもチェックしておきましょう。

逆に、株主優待ホルダーの注意点もあります。確かに、株主になるということは、その企業の成長に期待するとわけですが、期待どおりの成長が見込めないとなった場合は、手放す勇気も必要になります。

業績が回復しない、社長交代によって会社の方針に賛同できなくなったなど、その企業を応援する気持ちが薄れたら、利益を確定させること、場合によっては損切りすることが大事です。株主優待品に引きずられて、冷静なジャッジができなくなるのは避けたいものです。あくまでも株主優待品は、目標とする株価になるまでのプレゼントと思うべきです。

<著者プロフィール>

伊藤加奈子

マネーエディター&ライター。法政大学卒。1987年リクルート(現リクルートホールディングス)入社。不動産・住宅系雑誌の編集を経て、マネー誌『あるじゃん』副編集長、『あるじゃんMOOK』編集長を歴任。2003年独立後、ライフスタイル誌の創刊、マネー誌の編集アドバイザーとして活動。2013年沖縄移住を機にWEBメディアを中心にマネー記事の執筆活動をメインに行う。2級FP技能士。