成り行きで引き受けた「大人の自由研究」。ラズパイを使って『スズメ激写装置』をつくるというテーマは決めたが、さて。今回は、避けては通れぬ「Linuxのインストール」を進めたい。

味気ない作業だけれど

マイナビニュースの担当編集から電話がかかってきた。今回はいやな予感があったので、ビールの用意はしていない。

I氏:「ひとつ、お願いなんですけど」
海上:「はあ」
I氏:「Linuxのインストール、工夫して書いてもらえません? それ自体面白くないので」
海上:「避けては通れないんですけどね」
I氏:「なんか、こう、自動化みたいなことをすれば?」
海上:「どのみち、味気ない単純作業になりますよ」
I氏:「そこは、ほら、自由研究らしく創意工夫で」
海上:「どうにもなりませんって」
I氏:「創意工夫で」

と、相変わらずの無茶振りだが、確かにいまどきのLinuxのインストールは面白味がない。特にRaspberry Piの場合、ダウンロードしたLinuxのイメージファイルを解凍、microSDカードに書き込むだけの作業で完了してしまう。とはいえ、Linuxの経験が浅いユーザにとってハードルが高い作業ではあるし、避けて通ることは不可能。端折ってしまうと、カメラのセットアップもうまく行かない……。

一理あるな、ということで可能なかぎりGUIで事を進めることに決めた。WindowsとOS Xとでは利用するツールが変わってしまうが、利用する「Raspbian」(Raspberry Pi財団推奨のDebain系Linuxディストリビューション)をWEBブラウザでダウンロードしておき、デスクトップに移動しておくという準備作業を完了しておけば、あとはOS X/Windowsそれぞれの項目に分岐してインストールを進められる、という目算だ。

なお、microSDカードは書き込み可能な状態にしておくこと。他用途で使用済のmicroSDカードを流用する場合、すべての領域に書き込めないこともあるため、SDカードフォーマッターで初期化しておこう。書き込めないなど問題が生じる場合は、オプション設定で「論理サイズ調整」をオンにしてからフォーマットを実行すること。これは、OS X/Windowsとも同じだ。

まずはRaspberry PiのWEBサイトから「Raspbian」のイメージファイルをダウンロードする

使用済のmicroSDカードを使う場合、SDカードフォーマッターで初期化しておくと確実だ

OS Xの場合

OS Xには「dd」というデバイスからデバイスへ直接データコピーするコマンドが標準装備されているため、イメージファイルを書き込むための専用ツールを用意する必要はない。しかし、ターミナルでコマンドを実行するスタイルを敬遠するユーザが少なくないことから、GUIツールを使うことにした。

まず、microSDカードを装着していない状態から以下に示すフリーソフトウェア「Pi Filler」を起動しよう。その後、画面の指示に従いmicroSDカードを装着、書き込むイメージファイル(2015-05-05-raspbian-wheezy.img、ZIPファイルを解凍したもの)を指定しよう。microSDカードが消去される旨を確認するメッセージが表示されたあと、管理者権限行使のためのパスワードを入力し数分待つと、Raspbianの起動ディスクが完成する。

起動後、最初に表示されるメッセージ。この時点ではmicroSDカードを挿入しておかないこと

microSDカードが検出されたあと、書き込むイメージファイル(2015-05-05-raspbian-wheezy.img)を指定すると、いよいよ書き込みが開始される

管理者のパスワードを入力してから数分待つと、Raspbianの起動ディスクが完成する

Windowsの場合

Windowsでの作業には、「DD for Windows」がお勧めだ。イメージファイルの選択からmicroSDの指定まですべてGUIで処理できるうえ、メッセージやメニューが日本語化されているので操作に戸惑うことがない。管理者として起動することさえ忘れなければ、つまずくことなくRaspbianをインストールできるはずだ。

手順はかんたん、起動後に「ファイル選択」ボタンをクリックしてRaspbianのイメージファイル(事前に解凍しておくこと)を、続いて「ディスク選択」ボタンをクリックして対象ディスクにmicroSDを指定し、「<<書込<<」ボタンをクリックすればOK。これで数分ほど待てば、Raspbianの起動ディスクが完成する。

なお、書き込む直前には「対象ディスクより小さなイメージファイルが指定されていますが、よろしいですか?」や「ディスクサイズが4GByteを超えています。よろしいですか?」と確認されるが、いずれも「はい」と答えてかまわない。

「DD for Windows」の実行ファイルを選び、「管理者として実行」を選択して起動しないと、microSDカードに書き込めないので注意

ファイル種別に「All Files」を選択しないと、イメージファイルが表示されない

この状態で「<<書込<<」ボタンをクリックすると、RaspbianのイメージファイルがmicroSDに書き込まれる

まずは起動、ただし操作は「SSH」で

完成したmicroSDをRaspberry Piのスロットに差し込み、USB micro-Bケーブルをつなげば「Raspbian」が起動する。HDMIポートにディスプレイを、USBポートにキーボードとマウスをつなげば、Linuxマシンとして使えるRaspberry Piの完成だ。

しかし、目指すのはあくまで『スズメ激写装置』。キーボードもマウスも不要、撮影用のUSBカメラと遠隔操作用のWi-Fiアダプタさえあればいい。

そこで、若干難易度は高いが、最初から「SSHクライアント」を使い遠隔操作することをお勧めしたい。幸いRaspbianはデフォルトでDHCPサーバとSSHサーバが有効なため、ルータ/HUBとEthernetケーブルをつなげばただちにIPアドレスが割り当てられる。

SSHで遠隔操作するためには、Raspberry Piに割り当てられたIPアドレスを知る必要があるが、それには「Fing」というスマートフォンアプリが便利だ。同じLANに接続した状態でアプリを起動し、製造者情報欄に「Raspberry Pi Foundation」とある行を見れば、IPアドレスがわかる。

遠隔操作の開始は、OS XならばTerminalで「ssh pi@IPアドレス」(ユーザ名は「pi」、パスワードは「raspberry」)を実行すればOK。Windowsならば「RLogin」などの端末アプリケーションを入手しておこう。SSHクライアントはスマートフォン向けにもいくつか公開されているが、iPhone/Android版ともに無償の「Serverauditor」あたりがお勧めだ。

iOS/Android両対応のアプリ「Fing」を使うと、Raspberry Piに割り当てられたIPアドレスをすぐに探し出せる

iOS/Adnroid向けに無償提供されているSSHクライアントアプリ「Serverauditor」を使えば、PCを使わずにRaspberry Piを遠隔操作できる

I氏:「今回、これだけですか?」
海上:「ですね」
I氏:「"山"も"落ち"もないじゃないですか!」
海上:「Linuxのインストールという大命題をクリアしましたから」
I氏:「インストールがひとつの山、そういいたい?」
海上:「落ちをつけたいのはやまやまなんですけどね」
I氏:「……次回の件で、またすぐ電話しますから(ガチャッ)」
海上:「おちおちビールも飲めんな」