アップルは現在、全国8店舗のApple Storeで、子供向けのワークショップ「サマーキャンプ」を実施している。8歳から12歳までを対象にした3日間のワークショップで、子どもたちの持つ創造力を形にしていくことを目的とし、iPadで映画作りを学んだり、Macを使って自作のイラストや効果音を使ったインタラクティブブック作りに挑戦する。

「創造力と冒険に出よう。」を合言葉に、3日間で自分のアイディアをiPadやMacを使ってムービーやインタラクティブブックといった作品に仕上げていく。今回は7月27、28、31日に、Apple Store, Omotesandoで実施されたiMovieを使ったワークショップの様子をお届けする。

初日はまず、iPadやMacを触る前にストーリーボード(絵コンテ)を描き込んでいく。絵を描くのが苦手な子は文章でおおまかなストーリーラインをメモしていった。この日のメインは、絵コンテ描きと「GarageBand」でのBGM作成だ。撮影は絵コンテを元に、ワークショップ終了後に各自で行うという形式だ。子供たちが「GarageBand」のレクチャーを受けている間、保護者向けのワークショップが実施されていた。これは今回が初めての試みで、子供たちのサポートに役立つだけでなく、自身のクリエイティヴィティも高めてくれる。これから子供たちと一緒に撮影を行うにあたって、注意すべき点をストアのスタッフが挙げる。iPhone/iPadで撮影する場合は、画面いっぱいに映像を表示できるよう、横に構えること、後から編集することを考慮して、1カットは15秒くらいで気持ち長めに回すことといったアドバイスが出ていたようだ。ムービーの撮影の際、意外と縦にiPhone/iPadを構えてしまう方も多かったようで、レクチャーに対して「へえー」とか「なるほど」といった得心の声が上がっていた。

初日は、iPadやMacを触る前にストーリーボードを作成

「GarageBand」を使ってBGMの作曲

iPadを手にした子供たちは「GarageBand」を使って、思い思いの曲を仕上げていく。「GarageBand」には数多くのループパターンが楽器ごとに用意されており、それらを並べるだけで、簡単に楽曲を仕上げることができる。ホビーユース向けではあるが、侮るなかれ。プロのミュージシャンでもこれだけを使って、サウンドロゴやBGMの作成を行っていたりするのだ。作った楽曲を保存したところで、初日のワークショップは終了。解散後は前述のストーリーボードを元に撮影を行い、二日目の編集ワークショップに備える。

iPhone/iPadで撮ってきた映像をMacBook Proに取り込む

保護者向けのワークショップも実施された

二日目、iPhone/iPadで撮ってきた素材をMacBook Proに取り込んで、いよいよ編集作業に入っていく。ストーリーボードを見ながらiMovieにカットを並べていくのだが、実際にタイムライン上に映像を配置してみると、どうも繋がりがしっくり来ないというケースも出てきた。そこで、スタッフからiMovieにプリセットされた「トランジション」を使ってみようというアドバイスが。繋いだカットのお尻と頭にトランジションを配置すると、不自然さが解消され、またもや「おお」と得心の声が。ワークショップ初日での「気持ち長めに回す」のTIPSは、実はここで活きてくる。トランジションでカットを繋ぐ際、最初と最後の部分が交差するので「のりしろ」となる部分がなければならないからだ。保護者向けのワークショップはこの日も実施。カットのトリミングや前述のトランジションの適用法、文字によるタイトルの入れ方を学んだ。「カットが足りない場合に補う方法はあるか?」など活発に質問も飛び交い、真剣に講義を聞く姿勢が伺える。親子で一通りiMovieの使用法をマスターし、映像部分の編集が終わると、前日に作成したBGMをタイムラインに貼り付け、サウンドトラックを編集。ムービーファイルに書き出したところで、二日目のワークショップは終了した。

最終日は作成したムービーを皆で鑑賞

そして最終日、この日は29、30日にワークショップを受講したグループと合同での発表会が行われた。2グループを合わせると、児童の数は20名を越える。初日の見学で気づいたのは、参加者の枠を増やしたのかなということだった。確か昨年は1グループ6人か7人だったと記憶している。スタッフに訊いてみたところ、実際、参加者数を今年は増やしているとのことだった。人数を増やしたことで、十分なアドバイスが受けられなくなるのではないかとも思ったのだが、さすが、そこは抜かりない、受講者を増員した分、しっかりスタッフも増員してワークショップに臨んでいたのだ。

発表ではペットをテーマにしたもの、家族をモチーフにしたものなど、実に多様な作品が集まった。親子でワークショップを受けたこともあって、「ピクチャ・イン・ピクチャ」など高度なテクニックを使った作品が目立った。中には先に作成したサウンドトラックをガイドにして、歌や演奏の映像をつなげていくという手法を採ったり、静止画を並べてコマ撮りアニメーションのように構成したものなど、驚嘆すべき仕上がりの作品もあった。 こうして見ていると、「サマーキャンプ」で取り入れられている手法は、学校教育の現場に於いても有効なのではないかと感じられる場面が多かった。iPadやMacの基本的な使い方を習得する、アプリケーションを使いこなすといった次元に留まらず、創発された結果、作品に昇華されるというプロセスを目の当たりにしたのなら、教育関係者であれば、その方法論の可能性を探りたくなるのではないだろうか。また、親子のコミュニケーションを育むのにも絶好の機会であるとも感じられた。これまで、ビデオカメラと言うと家庭では主にお父さんのもので、編集したりプロジェクションしたりといったことも父親主幹ということが多かったはずである。ところが、iPad、Macは操作が簡単だ。子供でも撮影から編集まで自分で出来てしまう。つまり、密室的なお父さんの趣味から、一緒になって楽しめるもの、という跳躍が起こるのである。

修了証とリストバンド型USBメモリを手に記念撮影

ワークショップの最後には、修了証とリストバンド型USBメモリの授与に、記念撮影が行われた。作成したムービーを夏休みの自由研究として提出する子もいるようだ。Apple Storeでは親子向けのワークショップに注力しているようで、今回は参加枠を増やしたり、保護者向けのプログラムを用意したりと、工夫を凝らしている。今週、来週に開催されるサマーキャンプについては、仙台、名古屋、渋谷などで若干空きがあるようなので、時間があれば是非、親子で参加していただきたい。