7月26日、幕張メッセにて開催されたホビーの祭典「ワンダーフェスティバル2015夏」(ワンフェス)。ワコムブースではデジタルスカルプティングツール「ZBrush(ズィーブラシ)」を体験できる特設ブースを設置。さまざまなゲストを招いてのプレゼンテーションのほか、エヴァンゲリオン初号機を使ったキャラクターモデリング体験セミナーを開催した。
本稿では、「ZBrush」の開発元であるPixologic社のトマ・ルッセル氏によるプレゼンテーション「ZBrush4R7の機能と無料体験版の紹介」をレポートする。
Pixologic社にとって、ワンフェスへの出展は今回が2回目。ルッセル氏はまず「今回のワンフェスでは、前回よりZBrushを使っている人が多いことに気づきました」と挨拶。「2月にきたときは10件くらいでしたが、今回は55の出展ディーラーに使っていただいています」と笑顔を見せた。
また、「前回のワンフェスでは一人のアーティストの作品を紹介しましたが、今回は大勢のアーティストのZBrushによる作品を紹介します」と述べ、スライドを用いて多数の作品を紹介した。
アーティストとはTwitterを通じて知り合うことが多いとのことで、中には「Takuto」氏のようにアナログな手法からZBrushを用いたデジタル的手法に切り替えた例もあるという。さらに最近ではZBrushを学ぶための手段も増えてきており、例えば雑誌「デジタル造形」に登場する作品の3分の2にはZBrushが使われているとのことだ。このほか、「レプリカントEX」にもよく登場しているという。
ZBrushを用いた作品
こうした流れを受け、ルッセル氏は、ユーザーとメーカー、そしてユーザー同士の結びつきを強化するため、ZBrushユーザーコミュニティの公開を発表した。まだテスト段階にあり、8月1週目からの運用を予定している。
Pixologic社は先日、日本語版Twitterアカウントも開設した。その理由としてルッセル氏は、コミュニティの大切さを強調する。「コミュニティの中でユーザー同士がやり方を教え合ったり、作品を見せ合ったりすることで、実力が伸びていきます。すでにZBrushを使っている方とやりとりすることが大事だと思っています」とコメント。ちなみに、ここ最近、同ソフトの無料体験版の公開も開始されており、総合的にユーザーの習熟を後押しする動きともいえそうだ。
ZBrushは「粘土をこねて形を作る感覚」
プレゼンテーション後半では、ルッセル氏によるZBrushのデモンストレーションが行われた。
ルッセル氏はZBrushについて「造形ソフトであり、アーティスト中心に作られているソフト」と紹介。多くの人が3Dでスカルプティングするのは難しいと思い込んでいるが、ZBrushを使うと、まるで粘土をさわるかのような感覚で扱うことができると説明した。
ルッセル氏がまず制作したのは、ドラゴンクエストに登場するモンスターのスライム。球体のオブジェクトを引っ張ると、それだけでスライムの特徴的なシルエットができあがり、さらにブラシで粘土をなぞるとその部分に穴が空いて眼球ができあがった。
ZBrushにはこうした「押しこむ」「引っ張る」といったさまざまなブラシ機能があり、オブジェクトをくるくると回転させながら直感的に形を変更することができるという。また、ミラーリング機能により、左右対称をとることも簡単。まさに「デジタル粘土」といった感覚で、気に入った形が完成するまでいくらでもいじることができるのだ。アンドゥ機能もあり、1万回の巻き戻しができる。
「伝統的な造形方法では一度作ると一からやり直さないといけないが、デジタルならどこからでもやり直せる」のが魅力だとルッセル氏。さらに、一度作ったキャラクターのパーツやブラシを登録しておくことで、今までに作ったことのある部品を好きなときに呼び出して使えるのもZBrushならではだ。
続いてルッセル氏は「艦隊これくしょん」の艤装をスライドに映し、残りの時間で制作してみせると意気込む。
四角いオブジェクトを呼び出して、面取りを施し、砲身が取り付けられる穴をミラーリングで作成。続いて円柱の砲身を作り上げ、みるみるうちに艤装ができあがっていった。見ていても特に難しい作業をしているわけではなく、オブジェクトを引っ張ったり曲げたりして自分のイメージする形を作っているだけ。3D造形は難しそうだというイメージが覆された人も多かったのではないだろうか。
ルッセル氏は最後に「来週からZBrush日本コミュニティを公開します。Twitterもフォローしていただければ幸いです」と再度アピールし、デモンストレーションを締めくくった。
初心者から経験者まで集まった体験ブース
ワコムの特設ブースでは、実際にZBrushを使った体験セミナーも開催。ユーザーは「メカ編」と「キャラ編」に分かれて、ZBrushの基本的な操作を学んでいた。特に「メカ編」ではエヴァンゲリオン初号機のモデルを使用できる貴重な機会となった。
実際にセミナーを体験できたユーザーに話を伺った。
都内からこのセミナーのために足を運んだという男性は、もともと他社製ソフトを使った3Dモデリングの経験はあったという。しかし、他のソフトも触ってみたいという思いから、今回のセミナーを受講。ZBrushの使い勝手については、「粘土をこねて形を作っていく感覚。操作がとても直感的でわかりやすいと感じました」と好感触だったようだ。
また、普段はイラストを描いているという女性は、3Dモデリングに興味を持ち参加。ZBrushだけでなく3Dモデリング自体が初挑戦だったというが、「ブラシの操作感がとても良くて、イラストを描くのと似た感覚で使うことができました」とイラストレーターならではの感想を述べてくれた。