健康診断の結果を見て、「コレステロール値が高いから食事を控えよう……」と思ったことはありませんか? さらにテレビや雑誌などで「コレステロール=余分なもの」というイメージを持っている人も多いと思いますが、体にとって全く不要なものではありません。コレステロールは、生きていくうえで欠かせない成分の1つです。
コレステロールの役割とは?
コレステロールには、重要な役割があります。まず、私たちの体は約60兆個もの細胞によって作られていて、コレステロールはその細胞の膜を作り出すための成分になります。 また、ストレスを受けて、水分の調整が必要なときに分泌される副腎皮質ホルモンや消化吸収を助ける胆汁酸(消化液)の材料にもなっています。
ヒトは必要なコレステロールの7割を肝臓などの体内で合成し、残りの3割を食事から摂り入れています。食べ物からコレステロールを多く摂取すると、肝臓でのコレステロール合成は減少し、逆に少ないと体内でのコレステロール合成は増加します。つまり、食べ物からのコレステロール摂取量は、直接血中のコレステロール値に反映されるわけではないのです。
コレステロールは摂取しすぎると体に悪いって本当?
脂質の一種であるコレステロールには、悪玉(LDL)コレステロールと善玉(HDL)コレステロールの2種類があります。悪玉コレステロール値が高いと動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中などのリスクを上昇させるといわれています。コレステロールが"悪者"扱いされるゆえんはここにあるのではないでしょうか。
ところが、このLDLをめぐる考え方は割れています。日本動脈硬化協会や日本人間ドック学会などによって発表され、日本で広く使われてきた基準値は、「血中コレステロール濃度が高いほど心筋梗塞による死亡率が高い」という研究結果に基づいているそうです。その一方で、日本脂質栄養学会は「LDLの値が高い人は長生きをする」と主張しています。
そのため、2015年2月に米国農務省が発表したレポートでは、食事でのコレステロール摂取と血中コレステロール値に明らかな相関がないということから、『過剰摂取を懸念すべき栄養素ではない』という見解を新たにまとめています。
また、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」策定検討会でも、昨年まとめた報告書ではコレステロールの摂取目標量を盛り込みませんでした。
極端な食事ではなくバランスに気をつける
コレステロールは細胞膜、各種ホルモン、ビタミンD前駆体の原料になるなど、重要な栄養素。摂取制限はたんぱく質不足をまねいたり、低栄養を生じる可能性(特に高齢者)も指摘されたりしています。日々の食生活も「あれもダメ! これもダメ! 」と過敏になりすぎず、バランスよく食事を摂り、適度な運動をすることなどが健康を保つために大切なのではないでしょうか。
※写真は本文と関係ありません