経済同友会の小林喜光代表幹事は22日、日本記者クラブにて『Japan2.0 持続的な社会の構築に向けて』をテーマに、会見を開きました。
「グローバル化」「IT化」「ソーシャル化」の3つのうねりに対応していく社会を
日本の転換点を2020年とし、22世紀までを見据え今後の目標を掲げた『Japan2.0』について小林代表幹事は、
「日本にとって2020年はターニングポイントだ。世界各国もタイムラインを軸に将来設計しているなかで、この『Japanバージョン2.0』は日本にとって必要不可欠な構築体制だ。その主な目的としては『東京オリンピック・パラリンピック大会の成功』『国際公約である基礎的財政収支の黒字化』『人口減少、地方創生、エネルギーなどの問題解決に道筋』などを掲げている。
日本は今、『財政破綻の危機』『少子高齢化』『グローバルアジェンダ(水・食料不足、資源・エネルギーの枯渇、気候変動)』という3つの危機を抱えているが、これらの危機を脱し、世界が激変している『グローバル化』『IT化』『ソーシャル化』の3つのうねりに対応していく社会を目指していくべきであろう。
これまでの日本は、ハードウェァ中心の社会、企業が構築され、ずっと戦後をひきずってきたが、今、まさに変化しなくてはならない。世界がグローバル化し、ネット社会、ビッグデータなど、サイバー空間が多大な力を持ってきているなかで、これまでの規模で政治や経済を考える時代ではなくなってきている。安保法制の問題も、通信衛星や宇宙衛星の議論なしで語られているが、これは不思議なことだ。
経営者も『モノづくり』と言い続けていては、時代に取り残される。世界の最先端で戦える企業経営が求められており、グローバルで大きな視点が必要だ。
また、これまでの日本企業は、経営者による考察もなかったが、ここも改革していかなければならない。一方、政治は政治で、選挙で票を集めることしか頭になかった。
各々が心の内なる岩盤を砕かなければ、日本社会は変わっていかない」
と、自身の見解を述べました。
東芝問題、「数値だけを求めるようになってしまった企業は極めて不幸」
そして、東芝の不適切会計問題について小林代表幹事は、
「本来、企業経営というものは、ROEの追求だけではなく長期的、社会的な価値を求める姿勢が大切だ。東芝の場合は、数字目標ありきの体制や経営トップの決め方に問題があったと言える。
企業価値というものは、どれだけ持続させるかにあり、しっかりと儲けることは重要だが、社会的に認知され、新しいイノベーションを打ち出すことで発揮される。ひたすら数値だけを求めるようになってしまった企業は、極めて不幸だ。
また、トップ人事についても、経営者を引き継ぐ際には、自分にないものを持っている人を選ぶ姿勢が必要だ。補完し合う関係が理想的であり、会長も社長も次期社長も全て同じ考え方では、良質な経営には結びつかない。先輩は戦犯だと思うくらいでないと良質な経営はできない。
個人的には、人間は辞め時がすべてを語ると思う。相談役になってまでも人事権を発動するような企業は、やはり問題だ。もともと良いDNAも悪いDNAに変質してしまう。単なる組織論ではなく、どうやって魂を入れた経営をしていくべきか、我々もちょっと気を許したら同じ問題に陥るであろう。自身も戒めていきたい」
と熱く語りました。
執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)
経済キャスター・ファィナンシャルプランナー・DC(確定拠出年金)プランナー。著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。東証アローズからの株式実況中継番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重テレビ・ストックボイス)キャスター。中央大学経済学部国際経済学科を卒業後、現・ラジオNIKKEIに入社。経済番組ディレクター(民間放送連盟賞受賞番組を担当)、記者を務めた他、映画情報番組のディレクター、パーソナリティを担当、その後経済キャスターとして独立。企業経営者、マーケット関係者、ハリウッドスターを始め映画俳優、監督などへの取材は2,000人を超える。現在、テレビやラジオへの出演、雑誌やWebサイトでの連載執筆の他、大学や日本FP協会認定講座にてゲストスピーカー・講師を務める。