東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長の森喜朗元首相は22日、日本記者クラブで会見を開きました。

森喜朗元首相

「国立競技場の問題は、私にとっては大変迷惑」

会見の冒頭、森元首相は、

「国立競技場の問題は、私にとっては大変迷惑だ。それは、私や組織委員会には関係ないという意味だ。そもそも国立競技場を建設するのは国であり、都が協力するものだ。完成予定の2019年には、ラグビーワールドカップが開催されるため、メディアでは『ラグビーワールドカップのため』という取り上げ方をしているが、重要なのは、2019年にはプレ・オリンピックが開催されるという点にある。

たまたま私が日本ラグビー協会の会長をしているということと、この巨体な体型がそのイメージをつくっているのだろう。だが、ラグビーワールドカップは、もともと横浜の日産スタジアムを使用する計画だった。ラグビー会場としてはこだわっていない」

と主張しました。

「東京オリンピックの開催でかかる経費はだいたい2兆円」

また、東京オリンピックの開催、新国立競技場建設に関するコストについて、森元首相は、

「東京オリンピックの開催でかかる経費はだいたい2兆円くらいになるだろう。皆さんは高いと思われるかもしれないが2012年のロンドンでも2兆円以上、2014年の冬季オリンピックを開催したソチでは4兆~5兆円もかかっている。

また、競技場の建設費については、どの国も苦労をしている。実際に、2018年に冬季オリンピックが開催される韓国・平昌でも競技場の建設が進んでいない。よく外国の競技場建設費と比較をしたがるが、例えば北京では450億円だったとしても、日本とは労働コストが違う。

「なぜ、国立競技場のことばかりを言うのか」

どうしても、メディアは新国立競技場の話題ばかりに注目するが、ヨット競技一つを考えても、堤防やボートコースを整備するためだけに数百億円単位の費用がかかることになったのに、誰も高いとは言わない。メディアも取り上げていないし、スポーツ担当記者も何も言わない。なぜ、国立競技場のことばかりを言うのか。正直に言って、東京オリンピック招致の際に、猪瀬前都知事とJOCの竹田会長が作った案は極めて杜撰であり、競技をする上での詳細な設定を考えずに計画を作っていた。実際に、オリンピックを開催するためには多額のお金が必要になってくるのだ。

理解してもらいたいのは、新国立競技場は、オリンピックとラグビーのためだけに建設するのではないということだ。国立競技場は、すでに老朽化していたし、10年前から建て替えは必要とされていた。ただ、コストが高く、建て替えるきっかけがなかった。たまたまラグビー、東京オリンピックの開催がきっかけになったことで、政府は重い腰を上げたのだ。

もともと、安倍首相は科学や文化を象徴する『日本の科学技術のショーケースにしたい』という望みを持っていた。今後、どのように使用していけるのか、レガシーとして残る、日本人の誇りとなる競技場を建設するべきであろう」

と、自身の見解を示しました。

「今回の新国立競技場の見直し案を含め、しっかりと説明していきたい」

そして、今後の展開について森元首相は、

「IOCのバッハ会長は、施設の建設についてお金をかける必要はなく、会場の地域を広げても良いという内容の『五輪アジェンダ2020』の改革案を示してくれている。施設を整備することの大変さを理解してくれているので、今回の新国立競技場の見直し案を含め、しっかりと説明していきたい。

思い起こせば1964年、東京オリンピック開催の時には、私も感動した。日本が戦争に敗れて19年後、大人たちは日本の再建のために東京、日本を作り変えた。新しい日本を作るために、日本の底力を示し、日本の素晴らしさを世界にアピールした。今回は、世界を変えていくという気持ちで挑むべきであり、この国のトップにいる首相こそ、そういう気持ちで臨んでほしい。そして、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催日は7月24日に決定している。今年の7月24日にはセレモニーを計画しており、その際にエンブレムを発表する。

個人的な感情で言えば、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開幕宣言は、安倍晋三首相にやらせてあげたいと思っている」

と、自身の意志を述べました。

執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)

経済キャスター・ファィナンシャルプランナー・DC(確定拠出年金)プランナー。著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。東証アローズからの株式実況中継番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重テレビ・ストックボイス)キャスター。中央大学経済学部国際経済学科を卒業後、現・ラジオNIKKEIに入社。経済番組ディレクター(民間放送連盟賞受賞番組を担当)、記者を務めた他、映画情報番組のディレクター、パーソナリティを担当、その後経済キャスターとして独立。企業経営者、マーケット関係者、ハリウッドスターを始め映画俳優、監督などへの取材は2,000人を超える。現在、テレビやラジオへの出演、雑誌やWebサイトでの連載執筆の他、大学や日本FP協会認定講座にてゲストスピーカー・講師を務める。