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働く女性たちに、キラキラしただけではないリアルなエピソードを聞いていくこのシリーズ。今回は、新卒からずっと企画職に携わってきたのに、異動でこれまで働いていた内容とまったく違う部署に配属され、今まで出会ったことのないタイプの人たちとの仕事に戸惑っているKさん(35歳)に話を聞きました。女性の中間管理職の板挟み感が伝わってくるインタビューになりました。

店の中でのヒエラルキーが決まってしまった

――会社に入ったときはどんな仕事をしていたんですか?

さまざまな企画を実行していました。上司はいるけれど、部署の人はみんなそれぞれの仕事を持っていて、独立している感じでしたね。だから、前の部署ではさほどストレスはなかったんです。

――それが、今の配属先ではどのように変わってしまったんですか?

販売の部署配属されたので、まず休みが土日ではなくなりましたね。それと、今まで企画の部署にはいなかったような、叩き上げ系というかヤンキー系の店長の上司と、接客一筋の女性と、一緒に働くようになりました。

――叩き上げ系の店長はどんな人なんですか?

熱くていいところもあるんですが、その反面、自分のできないことを隠すために威嚇してくることもありますね。お店では 接客もあるけど、バックヤードでの準備もありますよね。私がバックヤードのコンピューターで、必要な資料作りをしていたら、その間に店舗でお客さん同士トラブルがあったようで、それに気づかなかったことで、大声で「何やってんだ!」と怒られてしまいました。

――怒鳴られてもそのあとは普通に仕事できるもんですか?

それがケロっとしてて、そのあとはちょっと悪かったな、みたいな感じで気を使われたりもしました。怒鳴られて困ったのは、ほかの店員に、「この人は店長が怒鳴った人だから舐めてもいい人だ」とみなされたことですね。

――それはどういう風に……

怒鳴られたことで、お店の中でのヒエラルキーが決まってしまった感じで、私の提案がことごとく聞き入れられない感じになっていきました。何を提案しても、反対する意見ばかりが寄せられて。それに対して、私は「反対するなら代案を出すのが前にいた部署でのルールです」と会議で言ったんですが、代案は出してくれないんですよね。

――企画系だったら、すぐに代案が出せるか もしれないけれど、ずっと接客だった人だと、なかなかすぐには代案って出せないことはあるかもしれないですね

それだけじゃなくって、仕事の分担なんかの提案も、これはイヤだ、私にはできないということで、却下されるようになりました。でも、そこで叩き上げ系の店長の凄さがわかったんです。

店長の扱いも完璧なバイト学生たち

――叩き上げには叩き上げのメソッドがあるんですね

私は分担を勝手に割り振っていたのですが、叩き上げ系店長は、その分担を一旦白紙にして、本人と話しながら決めていったんですね。こういう風にすれば、人は受け入れてくれるのかと思いました。

――自分で選ぶっていうのは大事ですよね。ほかに、どんなことがお店にいるとありますか?

バイトで来ている大学生がみんな優秀で気が利いてかわいかったりかっこよかったりします。なんとなく、店舗の空気も、その大学生たちが決定している気すらするくらいで……。

――店長も年上の女性社員もいるのにバイトの大学生が空気を決めるんですか?

そうなんです。叩き上げ店長の扱いも完璧で。最近の若い子、特に女子によくあるんですが、すごく自分のことを謙遜するんです。で、口でいろいろ意見してと言ってもなかなか答えてくれないんですが、こういうことが知りたいので、まとめて来て、とお願いすると、ものすごい詳細なレポートができていたりして。私が扱いかねている女性社員の気持ちも、店長の気持ちも、完全に掌握してますし、もうついていくしかないなと……。

――最近の若い子は、全方位的に優秀なんですね

ただ、優秀なぶん、私の失敗とかにすぐ気づいてチクられるのはちょっと……という感じではあるんですが(笑)。

――今、Kさんは会社に入ろうとしたときにしたかった仕事とは別のことをしているわけですが、今後はどうしようと考えているんでしょう?

今は、新しい職場でなんとかうまくいくようなメソッドを見つけることが楽しくなってはきています。ゲーミフィケーションじゃないですけど、こういう風にやったら、叩き上げ系の店長も納得させられるのかなとか、そういうことがわかるとうれしいし。それで、ビジネス書を読んでそのまま実行してみたり。

――どんなものを参考にしているんですか?

デール・カーネギーの『人を動かす』を読んでるんですけど、まだリンカーンがいかに凄いかのところなので、そんなに役に立ってないですし、周りの友人には「自己啓発書をそのまま実行するのはどうなの!?」とつっこまれたりもしています(笑)。でも、大学を卒業してからずっと、同じような人の中にいたので、こうして、今まで全然会ったこともないような人と仕事をすることも、経験になるのかなと思って。叩き上げ系上司に、「店長がいないとやっぱりダメですよ」って言ったら、すごくうれしそうに協力してくれたりとかもあったので、もし、その経験がうまくフローできたら、今の部署でも、別の部署にいっても、楽になるかもしれないなと思ってるんです。

まとめ

今までのこのシリーズのインタビューでも、自分には合わない職場にいったときに、いかに頑張ったり抗ったりしてみるかということが、後になって役立つということは多いようです。でも、あまりにも合わないところにいるのに、それに過剰に適応しようとしすぎるのもオススメはできないので、見極めも必要そうです。

Kさんの場合は、会社の給与体系などがしっかりしていることなどもあり、今は試行錯誤している真っ最中のようです。なんとか自分で仕事に対するモチベーションを見つけて楽しもうとしているところを見ると、中間管理職として、うまく上司や部下とやっていく方法を見つけられるといいなと、素直に思いました。


西森路代
ライター。地方のOLを経て上京。派遣社員、編集プロダクション勤務を経てフリーに。香港、台湾、韓国、日本などアジアのエンターテイメントと、女性の生き方について執筆中。現在、TBS RADIO「文化系トークラジオLIFE」にも出演中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に『女子会2.0』(NHK出版)などがある。