テレビ朝日系バラエティ『ロンドンハーツ』をはじめ、多くの番組でMCとして活躍しているお笑いコンビ・ロンドンブーツ1号2号の田村淳。楽しい雰囲気を作りながら、鋭いツッコミや質問も投げかけ、大物や騒動の渦中の人物など、だれが現れても対応してみせる。先日発売された『35点男の立ち回り術』(日経BP社)で、いかにして自分なりの"立ち回り術"を身につけ、ここまでやってきたのかを明かしているが、現在のMC力は、まさに彼が体得してきた"立ち回り術"のたまものであろう。

「芸人とは思っていない」。自分についてそう語る淳が、MC力を生かして将来やりたいことは、「結婚式の司会」。その狙いは、"脱テレビ依存"、そして、結婚式は芸人の技術が存分に発揮できる場所だと考えている。一般的なケースとは逆に感じるが、淳の場合、結婚したことでより新しいことに挑戦できるようになったという。さらに、プロデュース業や政治への関心、相方・田村亮との関係性の変化、コンビの今後などについても語る。

田村淳 1973年、山口県下関市出身。1993年に相方・田村亮とロンドンブーツ1号2号を結成。『ロンドンハーツ』(テレビ朝日)などのバラエティ番組から『淳と隆の週刊リテラシー』(TOKYO MX)のような社会派情報番組まで幅広いジャンルでMCを務める

――MCとして活躍している先輩芸人を見て勉強したそうですが、具体的にどのような方を見られたんですか?

(明石家)さんまさん、(島田)紳助さん、今田(耕司)さん、東野(幸治)さん、ナインティナインさん、雨上がり決死隊さん、ダウンタウンさんなど。そういった番組を持たれている先輩の番組を回って、これは俺にはできない、これは勉強になる、こういう手法だと自分が生き残れなさそうだから自分の持ち味はこうだとか、分析をする期間がありました。

――そうして見つけ出したご自身のスタイルとは?

僕は基本的に、収録時間を長く取る。すごい厳しいことをツッコミで入れているようだけれど、実はヘラヘラ笑って安心してしゃべれる空間を作ろうと思っているんです。安心しきったところで厳しい言葉だとしょげないし、二手三手が相手から出てくる。初手じゃなくて、二手三手がおもしろいと思っているんで。諸先輩方は、初手でなんとかしないといけないっていう、それはそれで戦場だしそれが実力だと思うんですけど、そういう人がたくさんいるんだったら初手にこだわらず、次の手、三手、四手がおもしろい言葉につながればベストかなと。

――『ロンドンハーツ』でも、鋭い質問を繰り出しながらも温かい雰囲気が出ていますよね。

自由にしゃべればいいじゃんっていう空気作りはしていきたいと思っているので。時間も気にしなくていい。だから僕の番組は、収録時間は長いです。

――幅広い番組でMCをやられていますが、今後挑戦したいことや目標を教えてください。

テレビではなく、結婚式の司会が一番やりたいんです。結婚式は泣き笑いがあるので、芸人がやるにはもってこいの場だと。吉本興業にしろ、ほかの事務所にしろ、おもしろくて技術のある人が活躍の場を見いだせずにいなくなるのがもったいないと思っていて、みんな結婚式の司会者になるのが一番ハッピーだと思うんです。生活できるし、技術発揮できるし、泣き笑いという自分を満たしてくれる場があるし…そういうウエディング事業を立ち上げたいです。自分もそれによってテレビ依存がなくなるので。今の僕は、完全にテレビに依存していて、テレビに言いたいことが100%言える状況にない。僕は板の上でやるタイプじゃないし、芸人と思っていないので、司会者として生きる道がほかにあることが健全だと。自分が発信したいことは、テレビじゃないところでやれるのが一番いいと思うんです。

――結婚式の司会者になり、テレビ依存を断ち切るというのは、安定を求められているということでしょうか? 結婚されてそういう考えに?

むしろ、テレビから離れるのは"非安定"。でも、そういうこともすべて受け止めてくれる嫁なんです。最終的に私がパンを焼いてパン屋さんやるって言ってくれて、すごく気持ちが楽になりました。普通は家族がいると違うことってしづらいと思うんですけど、僕の場合は結婚してむしろ新しいことに挑戦できるようになった。嫁と子供のためだけには生きないって決めてるんで。自分の人生を全うしてやろうって。奥さんとしても犠牲にされるのは嫌だと思う。あなたの生きたいように生きてください、それを支えますっていうタイプだと思うので。

――素晴らしい奥さんですね。結婚して、周囲の目が変わったということはありますか?

優しくなったねとか言われることもあるんですけど、全然見てないなって(笑)。もしかしたら表情とかに出ているのかもしれないですけど、精神的にはゴリゴリに攻めてやろうと。挑戦者としての気持ちが強くなったし、言いたいことも言うようになってきているんです。

――ののしっていいアイドル・スルースキルズのプロデュースもされていますが、アイドルプロデュースをしようと思った経緯を教えてください。

スルースキルズは"スルーするスキル"を持っているというアイドルですが、そもそも僕自身がスルースキルがなくてネットでののしられるのが嫌いなんでよすね。で、もしスルーする力を持っているグループがいたら、ネットで誹謗中傷をしている人がバカらしいと思えると思って作ったんです。自分の安定剤にもなっています。こういうスルースキルがないと、今のネット社会では生きていけない。スルースキルズというグループを作って、僕もスルーする力が前より身についたと思います。

――今年4月1日にメジャーデビューを果たされましたね。

彼女たちがきちんとアイドルとして生活できるようにまではしてあげたいんですけど、今のところまだ道のりは険しいですね。

――登録制アイドルも考えているとのことですが、これからという人たちに目を向けるようになったきっかけは?

事務所につまはじきにあった人とか、それでも夢を追いたい人とか、スルースキルズってそういう人たちの集合体なんですけど、そういう人たちだからこそ、ほかのアイドルとは違うエネルギーが生まれる気がして集めたんです。でも、ファンがつきはじめると調子に乗るんで、今、お前たちはほかのアイドルとは違うんだぞっていうのを言い聞かせなきゃと思っています。

――プロデューサーとしての経験は、ご自身にもプラスに?

そうですね。でも、至らないということを再認識させられています。俺はバーッて言いたいこと言っちゃうんですけど、それだとダメなんだなって。プロデューサーは、グッと我慢して見守るとか、機を熟すまで待つとか、今は言うタイミングじゃないとか…でも思ったこと全部言っちゃう人間なんで、プロデューサーには向いてないのかなと思いつつ、プロデュース2年生、3年生くらいになったら彼女たちともしっかり向き合えるようになっているのかもしれない。自分も発展途上です。

――政治家への関心も示されていますが、やはりいずれは出馬を?

出るなら神奈川11区で出たいですよね。(小泉)進次郎さんがどうのこうのじゃなくて、自民党と共産党の2択しかないっていうところで、2択でいいんですかって思って。進次郎さんに票を入れたら間違いないっていうくらい街ができあがっているので、そういうところに自分が出て行ったらどんな感じになるんだろうっていうだけです。でも、国の税金を預かる人たちなんで、興味本位で出ちゃダメじゃないですか。僕が出るんだったら、政治に興味のない人を政治に巻き込める形で出たいなと思いますけど、今のところは考えていないです。こんなに充実しているのに、今の生活をなげうって政治家になる理由がわからないですよね。それに、芸能人という知名度だけで受かって何もしないように見える政治家は嫌なので、出るとしたら自分じゃないとできないって思った時しか立候補しないです。