おしゃれなショップやあか抜けた家が立ち並ぶ、緑豊かな白金台。その地にすごくかっこいいオフィスができたと聞いて、行ってみることにした。

積み重ねられた歴史の中に、新しさを見出す

会社の名前はウォンテッドリー。ビジネスSNS「Wantedly」を運営する企業だ。エレベーターを降りて目に飛び込んできたのは、ホテルのロビーのようなエントランス。「WANTEDLY」のネオンがキラリと輝いている。

落ち着いたインテリアの中に「Wantedly」のネオンがきらり。格好いい…!

フロアスタンドもガラスのキャビネットも革張りのソファも豪華で上品。古い映画に出て来そうな懐かしげな味わいがある。

フロアは重厚な家具や空間としっくり馴染むタイル張り。小さなタイルを組み合わせ、「Wantedly」の「W」を描くという手の込んだ細工がされている。無造作に踏んでしまっていいのか……? とちょっと申し訳なくなってしまう。

細かなタイルで「Wantedly」の「W」を描く

そんな感じでエントランスからいきなり評判以上のかっこよさに驚く我々。オフィスについて、コーポレート・チームの山本あずささんにお話を伺った

――クラッシックな家具がたくさんですね

山本さん「ウォンテッドリーはインターネットで創る企業です。けれども、やみくもに斬新さを求めていては、さらに新しいものが出てきた時、流されて消えてしまいます。ですから、歴史の中から残って来たものに新しさを見い出したい、という意識でアンティークな家具を置きました。ちなみに各アイテムは、CEOの仲暁子がひとつひとつ選んだものです」

アンティーク品で揃えられた応接スペース。重厚で暖かい印象だ

新しいビジネスの形を、くつろぎ感で表現

――お昼寝もできそうな、階段状のスペースがとても気になります。ここは一体…?

山本さん「社内外の勉強会やパーティなどのイベント会場となる場所です。ここにパソコンを持ち込んで仕事をしてもいいんですよ」

――木とクッションの組み合せに、すごく和みます

山本さん「この階段状のデザインは、ニューヨークにある共有オフィススペース『Neue House (ヌーエハウス)』がモデルです。東海岸の、歴史の中から新しいものを生み出してゆく気風を意識しました。座って気ままに仕事をしたり、話したりできるこのスペースが、ウォンテッドリーのテーマのひとつ『シンボル』を表現しているんです」

ここに寝そべって仕事をしてもいい。ただし心地よすぎて寝込まないよう要注意が必要かも

――「シンボル」とは具体的にどのようなことを指すのでしょうか?

山本さん「ウォンテッドリーは今まで誰もやって来なかった方法で仕事のマッチングをし、100年先まで受け継がれるような新しいカルチャーを提案して来ました」

――100年先まで受け継がれる新しいカルチャーとは?

山本さん「例えば、これまで就職活動といえば、履歴書を書いて、スーツ姿で面接を受けて、といった堅めのスタイルが一般的でした。けれどもウォンテッドリーは、SNSを通じて『履歴書なんかなくてもいいじゃない?』『かしこまらなくても大丈夫』といった、気軽に人と会社が結びつくシステムを作り上げたのです。従来の就活とは異なり、もっとカジュアルに人と企業が出会うようにすることで、より互いの方向性に共感できるマッチングを実現させるという新しいスタイルを創る、そんな考えのシンボルとして、このスペースを作ったんです。直線的で無機質な場所より、曲線的で暖かい空間の方が心を和ませ、クリエイティヴな思考が生まれやすいと思います」

――結果として四角四面ではなく、柔らかさのあるオフィスになったのですね

ふわふわのクッション。ここに座ると思考も柔らかくなりそうだ

リラックスした働き方から、新しい発想も生まれる

――ラケットとピンポン球が置いてあるテーブルがありますが、もしかしてこのテーブルって卓球台ですか?

山本さん「そうです。ウォンテッドリーのもうひとつのテーマは『オンとオフの結合』。がっつり働く『オン』と気分を緩める『オフ』の使い分けが大切だと考えています。『オン』と『オフ』があってこそ、『はたらく』を面白くできるはず。だから気持ちを切り替えたい時のため、革張りのソファを置いたり、卓球台やカウンターを準備したりしました」

『オフ』を楽しむ卓球台は特注品。夕方の時間帯にプレイ人口が増えるとか

山本さん「もちろん和みっぱなしでも困りますので、作業にひたすら没頭したい時に使う集中ルームも用意してあります。部屋の名前『THE WORLD』は、CEOの仲が大好きな『ジョジョの奇妙な冒険』に由来しているんですよ(笑)」

「オン」を象徴する集中ルーム「THE WORLD」。しんとした空間で意識が研ぎすまされそうだ

集中ルーム名もばっちり。時を止めて打ち込むのだ!

――デスクに座っている方は靴を履いていないですね

山本さん「カッチリしたビジネスシューズがなくても、仕事はできるはず。ということで執務エリアは土足禁止で靴を脱いであがるようにしています。自由な気分で働けるよう、裸足も大歓迎です(笑)」

――素足だと、よりリラックスした気分になれそうです!

山本さん「仕事は楽しく、心躍るようにした方が良いですよね。そのためにも、オフィスでは住み慣れた自宅の居間のような、または行きつけのカフェのような"くつろぎ感"を大切にしました。心にも身体にも無理のないスタイルこそ、年月を経ても廃れないはずです」

執務エリアにあげていただくため、私達も靴を脱いだ

百の言葉で説明するより、オフィスの佇まいの方が雄弁

――本当に格好いいオフィス、評判はいかがでしょうか?

山本さん「このオフィスへは6月15日に移転したばかりですが、スタッフも『居心地が良い』と喜んでいます。来訪される方々も、この場から『シンボル』『オンとオフの結合』というコンセプトを敏感に感じ取ってくださいます。言葉で説明するより、ここに足を踏み入れ、社員やインテリアを見ることで、弊社の姿勢を察知していただけるようですね」

確かに言葉を尽くした説明よりも、オフィスの醸し出す空気が会社の姿を的確に伝えてくれるのかも知れない。

ミーティング中の皆さん。座り込んで参加してもOKだ

ものすごくおしゃれで、かっこいい環境なのに、気後れやプレッシャーを感じさせない。事業は最新鋭なのに、暖かな古めかしさもある。ウォンテッドリーのオフィスは不思議な魅力にあふれていた。