中国株式市場の急落を受け、中国当局は矢継ぎ早に株式市場のテコ入れ策を公表しました。一連の株価対策を見ると、中国株式市場の長期的な課題が示唆される内容と見られます。
中国証券監督管理委員会:大量保有株主の株式売却を半年間禁止
中国証券監督管理委員会(CSRC)は2015年7月8日、保有比率5%以上の大株主を対象に、向こう6ヵ月間の株式売却を禁止する措置を発表しました。上海総合指数が6月12日の高値から3割以上、下落する中(図表1参照)、中国当局は株価対策を矢継ぎ早に繰り出しています。
図表1:中国上海総合指数と創業板指数の推移(日次、期間:2015年4月8日~2015年7月8日)
どこに注目すべきか:ETF購入、大株主の株式売却禁止、財政政策
中国株式市場の急落を受け、中国当局は矢継ぎ早に株価対策を公表しました(図表2参照)。一連の株価対策を見ると中国株式市場の長期的な課題が示唆される内容です。
例えば、優良ETFの購入は証券会社が行う模様ですが、通常、株価対策の購入であれば日銀がETFを購入しているように中央銀行、または年金基金等の機関投資家が主体となるのが普通です。民間の証券会社が主体となると、証券会社の信用低下も懸念されます。上海株式(A株)の1日当たり株式売買代金が1.5兆元に対し、購入額が1,200億元程度と小規模なのは信用リスクを意識したのか不明ですが、中国に機関投資家が育っていないことが課題と思われます。
次に、短期的な効果は期待できるかもしれませんが、7月8日に発表された大株主の株式売却禁止などは流動性を低下させる懸念もあります。また、図表2では「その他」に示した株価対策(?)では1,400以上の株式銘柄が上場企業の判断で売買停止となっています。他の国でもサーキットブレーカーのように証券取引所の判断で、事前に明記されたルールにより株式の取引が停止されることはありますが、上場企業の判断で上場株式の半数近くが売買停止というのは異例です。規模が小さく取引停止銘柄の多い創業板指数は下落ペースが低下しましたが(図表1参照)、反対に取引のできる優良大型株が大幅下落するマイナス面が露呈しました。その上、下落局面で純粋に投資目的で購入意欲のある投資家がA株を投資信託で購入したくても、取引停止銘柄が多く投資信託が申し込みを停止しているケースも見られました。
最後に、一連の対策は即効性重視で、利下げを除き景気対策が目立たない点が気がかりです。日本では以前、総合経済対策など景気対策が、公的資金による株式購入など株価対策と共に実施されました。投資家が注目したのは「真水(公共投資などにより経済成長率を引き上げる対策)」で、景気のテコ入れと株価対策が一体となることによる中長期的な株価の回復が期待されました。中国当局も公共投資の主体となる地方政府の債務建直しに着手しており、成果が待たれます。
図表2:中国株式市場の主な株価対策
●ピクテ投信投資顧問が提供する、「今日のヘッドライン」からの転載です。